成果を上げている企業は、こうした非対面のアプローチを「精密なツール」として位置づけ、対面式と同等の厳密さで施策設計、予算配分、評価しています。また、ステークホルダー一人ひとりのニーズや嗜好に合わせて非対面式のメッセージやチャネルを高度にパーソナライズ化するとともに、新たな技術や手法も適切に取り込みながら、対面・非対面式のアプローチを効果的に組み合わせています。
4. 市場進出規模と投資レベルを決定(調整)する
優先して変えるべき行動とそのアプローチ手法が固まり次第、次なるステップとしては、実際にどの規模で実行するのかを決定していきます。ここでは、戦略を実行するために必要な投資規模、人材、技術、外部ベンダーからの支援などを総合的に検討します。この際、効率的かつ大規模にアプローチするために必要となる仕組み(例:顧客関係管理(CRM)プラットフォーム、モジュール型・オムニチャネル型プラットフォーム、データ統合システムなど)について具体的に見極めることも重要です。
想定している計画が利用可能なリソースを超えてしまった場合には、対象とする顧客や行動を絞り込む、段階的に展開する、あるいは、主要な障壁にのみ注力したコスト効率の高い戦略へ見直す、といった再検討が必要となります。
ここで重要なのは、単に予算内に収めることではありません。低効果な施策への過剰投資を避けつつ、採用や行動変容を阻む主要な障壁の解消に向けて、必要な領域に重点的にリソースを配分することが、このステップの目的です。
5. 実行し、成果を継続的に評価する
第五のステップでは、戦略の実行と継続的な効果測定に重点を移します。競合の参入、ステークホルダ ーのニーズ変化、新たな障壁の出現など、不確実な要素は避けられません。こうしたリスクを想定したシナリオプランニングを通じて、起こりうる市場変化と対応方針を整理するとともに、「どの指標が、どの水準に達したら、どのような判断を下すのか」といった意思決定トリガーを事前に明確に設定しておくことが重要です。効果測定では、実施件数や接触回数といった活動量にとどまらず、あらかじめ定義した成果ベースのKPIに基づいて評価を行います。
この評価結果は、次のGTMモデル改善サイクルへと直接つながります。すなわち、既存の障壁に対する進捗を再評価し、新たに生じた障壁を特定したうえで、アプローチ計画を継続的に見直していきます。どの取り組みが成果につながっているのか、どれが期待した効果を発揮していないのかを常に検証し、その結果に基づいて施策を適宜調整することが、GTM戦略チームにとって重要です。こうした調整は、既存のステークホルダーとの関係を損なわないよう慎重に行う必要がありますが、一方で、ためらうことなく迅速に意思決定し、機動的に実行へ移す姿勢も欠かせません。
このように、データに基づく循環型のアプローチを取ることで、時間の経過とともに、より柔軟で的確かつ持続的に成果を生み出すGTM戦略へと進化していきます。
経営陣への示唆
今日のバイオ医薬品市場では、各部門がそれぞれの役割に沿って施策を推進するなかで、ステークホルダーの行動や優先度に立ち返って戦略を見直す機会が限られることも少なくありません。一方、本稿で提唱した「行動を起点としたGTM戦略」では、新製品の採用を阻む主要な障壁に焦点を当て、そこを突破するためのリソースを揃えることで、戦略の軸をぶらさずに市場参入を推進できます。また、戦略の土台が確立しているため、ブランドプランニングをはじめとする下流の工程においても、各ステークホルダーの重視点や懸念点などを踏まえながらメッセージやチャネルを精緻に最適化できるでしょう。
このアプローチを実現するために、経営陣は次の5つの項目に重点的に取り組む必要があります(図5参照)。