Unlocking Clinical Trial Success: Strategic Coverage of Patient Care
doctor speaking to patient
According to our analysis, sponsors of early-stage oncology trials could improve participation and realize costs savings by covering the cost of care for trial participants.

研究ツール・診断薬業界にとって、2023年は、マクロ経済の逆風、バイオ医薬品企業における軟調続きの資金調達、結果として起こった重要顧客の支出パターンの変化など、業績に影響を与える要因が重なったことを考えても、困難な年となった。多くの業界関係者が2024年の市場成長を限定的と予測する中、「景気回復の兆し」(例:バイオ医薬品企業の資金調達環境の安定化、バイオテクノロジ ー業界における楽観主義の回復、バイオ医薬品企業である顧客に対する典型的な投資パターンへの逆戻り)と引き続きの逆風(例:持続的な高金利、中国など主要地域における継続的な経済的課題)が混在しているため、不確実性が生じている。

短期的な見通しを予測することはできないものの、業界の長期的な見通しを支える重要かつ大きな流れは引き続き極めて堅調であることを忘れてはならない。その理由は、ますます多くの臨床データが得られ、用途も引き続き拡大していることが、精密医療や高度な治療モダリティの有望性の裏付けとなっているからである。今回のエグゼクティブインサイトでは、L.E.K. Consultingとして、2024年を通して研究ツール・診断薬業界に継続的な影響を与える可能性の高い主な動向について考察する:

  • 経済・資金調達の動向に起因する研究ツール・診断薬に関する案件のテーマにみられる変化
  • オンコロジー領域内外の精密医療の用途拡大に起因する、プロテオミクス企業の持続的な発展
  • オンコロジー精密医療の戦略における新しい用途の拡大
  • 精密医療ツールキットの、オンコロジー領域以外、すなわち神経疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患領域などへの拡大
  • 高度なモダリティパイプライン候補の「次の波」に後押しされた、目的に適合した研究開発・製造ソリューションに対するニーズの推移

経済・資金調達の動向に起因する研究ツール・診断薬に関する案件のテーマにみられる変化

バイオ医薬品企業における資金調達が軟調であることが、過去18カ月にわたり、研究ツール、診断薬、製薬業務に対するバイオ医薬品企業の川下への投資に緩やかな影響を与えている。この逆風がもたらした予期せぬ結果は、研究ツール・診断薬に関する案件の性質や進行速度のいずれにも引き続き影響を与え続けている(図1参照)。

資金調達は、新型コロナウイルス感染症パンデミックの初期に急増したが、その後、2021年第1四半期から2022年第2四半期にかけて、市場では複数四半期にわたる減少がみられた。過去6四半期には2019年の水準と同水準の資金調達がみられ、資金調達は安定したかに思えたが、資金調達の急激な減少に伴う不確実性が原因となって、規制上のマイルストーンの達成と価値の変曲点(例:臨床試験データの発表)に向けた推進を優先し、創薬への取り組みに対する投資の拡大の優先順位を下げ、優先順位の低い臨床開発プログラムを一時中止するという形で、バイオ医薬品企業の投資に変化を促すこととなった。全体的な影響として、まだ研究開発の初期にある段階で研究ツールや診断薬を市場に出すことに対して困難が生じており、この分野での案件の性質にも大きな変化があった。

2023年には確かに高額な買収が複数行われたが(次項参照)、M&A活動は引き続き少数の大規模な戦略的買収者に集中していた。このような動向が原因となって、投資家が棚ぼた的な利益を得た後に市場エコシステムに資金を再配分するという資本のリサイクルは、研究ツール・診断薬のセグメントではまだ実現していない(この状況は、より多くの専門ファンドに利益が分散している最近のバイオ医薬品企業の間でM&Aが加速している状況とは対照的である)。結果として、研究ツール・診断薬に関する案件のテーマは、史上最高の評価額を誇る新規株式公開や特別な目的を持った買収企業から、手元現金の温存や代替融資といったテーマへと徐々に変化してきた。案件のアーキタイプの例として以下が挙げられる:

  • 資本を温存するための対等合併(例:Standard BioToolsとSomaLogicの合併、Berkeley LightsによるIsoPlexisの買収)。
  • 資金調達や公設市場を利用するための代替手段としての逆合併(例:The ralink Technologiesが合併してIMAC Holdings Inc.の完全子会社となる等)
  • 不良資産の統合(例:破産オークションを通じたPfizerによるLucira Healthの3,600万ドルでの買収、BrukerによるPhenomeXの1億800万ドルでの買収
     

2024年には、上述したアーキタイプのような案件がさらに多くなり、成果に結び付く可能性がある。特に、経験豊富な投資家や戦略家は、広範囲に及ぶ部門の後退によりその価値が過度の影響を受けている魅力的な資産を有する研究ツール企業を対象として、不規則的な機会を求め、継続的に状況を分析していくと予想される。これと並行して、(昨年、業界展望の中で「注目すべき点」として特に取り上げた)企業の収益性の改善傾向も続く可能性が高い。その理由は、戦略的買収者にとって魅力的な投下資本利益率を達成する、あるいは2025年以降の資金調達情勢に備えるため、引き続き現金燃焼率に対処できるよう、研究ツール・診断薬を扱う企業の規模が継続的に拡大していくからである。

オンコロジー領域内外の精密医療の用途拡大に起因する、プロテオミクス企業の持続的な発展

プロテオミクス企業は、引き続き活発な投資分野であるとともに、研究ツール部門にとっては高成長が見込める用途となっている。このことは、2023年に注目を集める数十億ドル規模のプロテオミクス企 業の買収が2件あったことからも明らかである(DanaherによるAbcamの57億ドルでの買収、Thermo FisherによるOlinkの31億ドルでの買収)。L.E.K. Consultingでは、a) データ出力量の増加、バイオインフォマティクス機能、人工知能(AI)/機械学習アルゴリズムの成熟を前提としたバイオロジー分野の大規模な並列化や、b)オミクス技術(例:プロテオミクス測定に使用するDNAバーコード)の継続的な融合など、世界的にみられる大きな流れに後押しされ、このセグメントでは引き続き成長が加速し、投資も続くと予想している。結果として、このような動向が用途開発を促進し、オンコロジー領域内外へと精密医療の拡大を引き続き促していくと考えられる。

オンコロジー精密医療の戦略における新しい用途の拡大

昨年版の「展望と業界動向報告書」の中では、腫瘍の先進的診断薬において次世代シーケンシングが果たす役割を検討し、複数の癌の早期発見に向けた微小残存病変の検出に関する取り組みなど、用途という点からみた重要な進展を特に取り上げた。近年、腫瘍診断薬の基礎となる別の手法、すなわち病理学の分野では、デジタル技術とコンピュータ技術によって劇的な加速化がみられている。2021年、米国食品医薬品局(FDA)は、AI情報を活用した体外診断装置を初めて承認した(前立腺癌診断用のPaige Prostate)。腫瘍型を問わない包括的なAIベースの一連の腫瘍診断ソリューションの構築に向けた取り組みが引き続き行われており、2023年には画期的な提携が数多くなされている(例:Microsoftと Paige、OwkinとMSD)。

この新用途は、新たな知見が得られるAIツールの成熟に加え、バイオマーカー発現の不均一性を(サブ)細胞レベルで理解したいという研究者からの要望の高まりを反映したものである。早期に導入した検査機関では、これらのツールを使用し、病理医のワークフローを自動化・標準化して効率化を進めるとともに、デジタル病理診断の現行の手続き用語コードについては利用可能な追加の償還がないことを踏まえ、大規模な病理検査機関にかかるコストの削減を実現している。とはいえ、アルゴリズムが改善され、精密医療で定量的バイオマーカー(例:新たに定義されたサブタイプであるHER2低発現乳癌を適応とするAstraZenecaのEnhertu)や新たな形態学的バイオマーカーの評価がますます必要となるにつれて、必要とされる病理学的解析が、人間のスライド分析能力を超えるような使用事例が開発される可能性がある(図2参照)。

精密医療ツールキットの、オンコロジー領域以外、すなわち神経疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患領域などへの拡大

2値的な検査結果(例:循環腫瘍DNAの百万分率 vs. 推算糸球体濾過量の変化のあり/なし)ではな く、定量的な測定値の利用の拡大を含む、癌ドライバー変異のゲノム解析以外の分野でもオンコロジー領域の精密医療ツールキットが多様化するに従い、ドライバー遺伝子があまりない疾患領域でも、疾患の病態生理を理解し患者管理に関する情報を得るため、こういったツールキットが一層利用されるようになると考えられる。神経疾患・免疫疾患領域の場合、複雑で、ノイズが多く、相互接続されたタンパク質や遺伝子のネットワークから、臨床的に意義のある知見を引き出すには、経時的な分析物の定量的な測定を行う必要がある。多くの症例で、比率(例:アルツハイマー病のアミロイドβ比 40:42)、複数の分析物シグネチャー(例:ループスのI型インターフェロン遺伝子シグネチャー)、または他の統合データ(例:遺伝子型、年齢)を活用する必要が出てくるかもしれない。

神経疾患分野では、2023年にOctave Biosciencesが臨床検証データを発表、リアルワールドエビデンス試験を開始した。これは、(Olink技術に基づく)複数の分析物を用いた多発性硬化症疾患活動性検査に対する支払保険適用範囲の確立に向けた継続的な取り組みの中で行われた。また、製薬企業が、オンコロジー領域以外での精密医療の利用に価値をますます見いだしつつあるという兆候もみられ          ている。具体的には、潰瘍性大腸炎分野において、Merckが精密治療バイオテクノロジー企業である Prometheus Biosciencesを108億ドルで買収したことや、バイオマーカー陽性患者においてベストインクラスの寛解率を示したRVT-3101についての第IIb相データの発表後にRocheによるTelavantの71億ドルでの買収が最終合意に達したことなどがある。

高度なモダリティパイプライン候補の「次の波」に後押しされた、目的に適合した研究開発・製造ソリューションに対するニーズの推移

細胞治療、遺伝子治療、核酸治療の「第一波」の臨床/規制上の成功は、多額の投資(2017~2023年の間で1,000億ドル程度)に加え、それに伴った、これらのモダリティを検討する初期段階のパイプラインの急速な成長を促進することとなったパイプライン全体で見ると、2017年から2022年にかけての年平均成長率は約8%であった。小分子パイプラインでは年間約5%、従来型の生物学的製剤(例:モノクローナル抗体、組換えタンパク質療法)では年率約8%の成長が認められた。一方、高度なモダリティの成長率は年間20%を超えており、パイプライン全体の成長と、従来型のモダリティから高度なモダリティへという、モダリティ構成の移行の両方を促すこととなった(図3参照)。

2022年末になるまでに、パイプラインの20%超が高度なモダリティ医薬品に的を絞ったものとなった。この割合は、5年前には10%程度に過ぎなかった。結果として、このパラダイムシフトにより、これらの新薬の研究・製造のための、重要かつモダリティ別のワークフロー・ソリューションが生まれることとなった。その中には、データ(例:プラスミド、新規細胞株)、試薬[例:メッセンジャーリボ核酸(mRNA)のキャップ形成、形質移入試薬]、装置(例:新規バイオリアクター、クロマトグラフィーカラム、樹脂)などがある。

今や、高度なモダリティ全体にわたり第一波のプログラムが数多く承認されている。そのため市場が求めているのは、商業的な牽引力があるという証拠であり、関係者は、Zolgensma(Novartis)や Yescarta(Kite)に並ぶかもしれない、収益が10億ドル超となるような、次の画期的新薬となる先進治療薬が出ないか慎重に様子を見ているところである。パイプラインの展望について言えば、開発者が重視しているのは次の波となる用途である。その用途が成功すれば、その後に続く高度なモダリティ分野への投資流入を促すことになるとともに、こういった新用途に対処する、目的に適合したソリューションに対するワークフローのニーズが増加するきっかけとなると考えられる(図4参照)。

ウイルスベクター遺伝子治療[承認された報告メカニズム(ARM)を通じて2024には7件の規制当局による判断が予定されている/実施される可能性がある]

先駆的なウイルスベクター遺伝子治療では、単一遺伝子超希少疾患に対処するための遺伝子付加に焦点を当てていた(例:Luxturna、Zolgensma)。最近の承認では引き続き複数の遺伝子付加法が活用され、血友病A(BioMarinのRoctavian)など、(まれではあるものの)より広範な適応に対応する方向でソリューションが利用されている。パイプラインにある治療法の次の波では、より広範な適応での遺伝子付加を引き続き検討していくことになる。具体的には、希少疾患以外の分野(例:Bayerとうっ血性心不全、Candel Therapeuticsによるウイルスベースの免疫療法)やアデノ随伴ウイルスが治療用タンパク質を発現させる遺伝子を送達できる多遺伝子性疾患への適応の可能性(例:滲出型加齢黄斑変性、パーキンソン病、前頭側頭型認知症)が挙げられる。

対処可能な適応症の拡大にしたがい、開発者は標的臓器にベクターを選択的かつ安全に送達し、製品コストを削減するソリューションを模索し続けている。以前に発表した記事では、これらの主要なウイルスベクターのワークフローにあるニーズの概略を示し、新たなバイオプロセシング•ソリューションが持つ可能性を検討した。

遺伝子編集細胞療法(2024年には規制当局による判断がARM当たり約4件、予定されている/実施される可能性がある)

最初に承認された遺伝子編集細胞療法は、自家キメラ抗原受容体(CAR-T)細胞療法アプローチによって血液癌に対処するものであった。FDAが承認した6つのCAR-T療法の適応範囲は拡大し続けている。その中には、初期の治療ラインに対する承認や、臨床試験/コンパッショネートユース•プログラムを介した承認の取得も含まれる。細胞治療の次の波に入ってくるのは、自家CAR-Tの適用拡大に加え、新たなアプローチ/適応症である。固形癌は引き続き重要な焦点領域となっており、自己由来以外のさまざまなアプローチを開発者は模索している(例:Iovanceが最近承認を取得した、黒色腫を適応とした腫瘍浸潤リンパ球療法、Adaptimmuneによる滑膜肉腫を適応としたT細胞受容体療法)。

核酸治療(Biomedtrackerによると、2024年には規制当局による判断が約3件実施される可能性がある)

核酸治療の初期の取り組みでは、希少疾患における遺伝子標的の発現をノックダウンするためのアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)やRNA媒介干渉(RNAi)によるアプローチが重視されていた
(例:AlnylamのOnpattro)が、新型コロナウイルス感染症パンデミックが起こり、ModernaやPfizer/ BioNTech(BNT)によるワクチンの取り組みを通じて、mRNA医薬品が最前線に躍り出ることとなった。現在、mRNA 医薬品の次の波は、さらに進んだ呼吸器感染症(例:新型コロナウイルス感染症やインフルエンザを適応としたmRNA-1083)を標的としている。また同時に、個別化癌免疫療法によるオンコロジー領域の研究も拡大している(例:黒色腫を適応としたmRNA-4157、膵臓癌を適応としたBNT122)。こういった療法では、mRNAを介して患者特異的なネオアンチゲンが組み合わさって発現し、チェックポイント阻害剤に対する免疫応答を調節することになる。mRNAについては、治療用タンパク質の送達(例:プロピオン酸血症を適応としたmRNA-3927)や、CRISPR-Cas9などの遺伝子編集ヌクレアーゼのin vivo送達(例:VerveのPCSK9標的塩基エディター)を目的とした研究が行われている。

mRNAに対する日々変化するニーズの中には、in silicoスクリーニングと配列最適化を目的としたツールの改良、新種のmRNA(例:環状  RNA、自己増幅RNA)の発見とプロセスの支援、さらに多くの種類の臓器に対し選択的なmRNA送達が可能となる薬物送達ソリューションのツールキットの拡張などがある。mRNA以外では、低比重リポタンパク質コレステロールを減少させるという、心疾患リスクの高い患者を対象としたNovartisのLeqvioが承認されたことからも明らかな通り、ASOとRNAiのパイプラインは引き続き拡大しており、適応範囲を広げる取り組みが行われている。オリゴヌクレオチド治療分野で適応範囲を広げることを目標とする中で重要なニーズとなるものの中には、より長い(例:50塩基対を超える)オリゴヌクレオチド配列の拡張性の向上、コストと有機溶媒の使用量の削減、収率と合成効率の向上などがある。

結論

ライフサイエンス分野の研究ツール•診断薬市場を短期的に見ると、マクロ的状況により不確実性があるにもかかわらず、精密医療や高度な治療が持つ科学的有望性と変革の可能性は、この分野への中心的な投資テーゼを引き続き立証するものとなっている。現在、バイオテクノロジーは黄金期を迎えており、新規の高度な研究ツールの光学技術とそれに伴う価値の高い研究•臨床応用の開発が継続的に促進されている。新型コロナウイルス感染症時代の資金調達ブームの間に設立された革新的な企業の多くは、まだライフサイクルの初期段階にある。今後起こりうる次の企業の波では、商業的な成熟と規模の拡大がみられると予想される。このことは、2025年以降の将来的な戦略的事業開発活動の土台となる可能性がある。その理由は、統合企業がM&Aを活用して売上増加を図り、新たな高成長分野への参入を無機的に加速させようとしているからである。

詳細については、lifesciences@lekinsights.comまでお問い合わせください。

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