成長の扉を開く


編集協力・問合せ担当: 井ノ口雄大 、パートナー、ライフサイエンスプラクティスチーム

過去10年にわたり、シンガポールのライフサイエンス産業(製薬および医療機器分野を含む)は、著しい変革を遂げてきました。かつてはアジア太平洋地域における商業拠点が中心でしたが、現在では戦略的な投資、拡大する人材プール、そしてバイオテクノロジーおよびメドテック企業から成るエコシステムによって支えられ、イノベーションの拠点として活況を呈しています。

10年前、シンガポールのライフサイエンス分野には、十数社のバイオテック企業とおよそ18,000人の従業員しか存在しませんでした。しかし、2015年から2025年までを対象とする「RIE(Research, Innovation, and Enterprise)」といった国家的な取り組みによって、同分野は大きく成長しました。雇用は40%以上増加し、バイオテック企業の数も2015年の約12社から2025年には60社以上へと4倍に拡大しています。この急成長は、シンガポールが地域の商業本部から、世界的なライフサイエンスのイノベーションおよび研究開発の中核へと進化したことを如実に示しています。 

2025年のエコシステム 

2025年のシンガポールのライフサイエンス・エコシステムは、強固かつ多様な構造を持つまでに発展しました。現在は以下のような企業や組織が拠点を構えています: 

  • 製薬系の多国籍企業(MNC):30社以上
  • バイオテック企業:60社以上
  • メドテック系の多国籍企業:50社以上
  • メドテックおよびデジタルヘルス系スタートアップ:400社以上 

この成長は、以下の4つの主要な支援基盤によって支えられています: 

  • 研究(例:NUS、NTU、NUHS、A*STAR)
  • 開発(例:NHIC、EDDC、DxD Hub)
  • インキュベーション(例:JLABS、Life Science Incubator)
  • 資金調達(例:EDBi、ClavystBio、Enterprise Singapore) 

これらはいずれも、政府の戦略的ビジョンによって強力に後押しされています。世界の製薬大手と高成長スタートアップのダイナミックな組み合わせが、この変革を加速させてきました。 

今後の展望:イノベーションへのコミットメント 

シンガポールの志は、ますます高まっています。RIE 2030戦略の下、2025年予算ではライフサイエンス分野の研究開発に31億米ドルが投じられる予定です(これは政府総支出の約3%に相当し、中国など一部の主要国を上回る規模です)。これにより、シンガポールはライフサイエンスおよび医療機器分野における世界的リーダーとしての地位をさらに確固たるものにしようとしています。今後5年間は、企業、研究者、投資家にとって一層大きな機会が広がることでしょう。 

今、考えるべき重要な問い 

このダイナミックなエコシステムにすでに関わっている、あるいは将来的に参入を検討している方々にとって、以下の問いが重要となります: 

  • 貴社は、進化し続けるシンガポールのライフサイエンス環境の中で、どのようなポジショニングを取るべきでしょうか?
  • 他国のエコシステムは、シンガポールの急速な変革からどのような教訓を得られるでしょうか?
  • 多国籍企業の事業開発担当者や投資家にとって、どのような投資機会が存在しているでしょうか? 

L.E.K.コンサルティングは、こうした機会を理解し、活用するためのご支援をいたします。 

イノベーション・エコシステムに関する世界的な動向についてさらにご関心がある場合は、ぜひお気軽にご連絡ください。皆様と知見を共有できることを楽しみにしております。 

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バイオ医薬品のR&D生産性を再定義する:新たな知見と戦略


Key takeaways

R&D productivity, measured as revenue generated per investment dollar, is driven by two primary factors: the efficiency of the R&D process (approvals per R&D dollar) and the effectiveness of product launches (revenue per approval).

Large pharmas (top 15 companies ranked by revenue) prioritize effectiveness over efficiency. While they are less efficient in generating approvals, they excel in maximizing revenue per launch, particularly from internally discovered and developed products.

Smaller companies emphasize efficiency, focusing on securing approvals as cost-effectively as possible. Their capital-conscious approach enables leaner operations but often comes at the expense of optimizing commercial outcomes. This focus on efficiency can limit their ability to fully realize the value of their assets and achieve significant market potential.

Participants in the biopharma ecosystem must strike a balance between efficiency and effectiveness by redefining their respective roles. Smaller companies should collaborate strategically with larger pharmaceutical firms to target broader market opportunities while retaining value in partnerships. Larger pharmas must enhance internal R&D efficiency by optimizing for access to early science, speed in clinical development and development success rate. 

編集協力・問合せ担当:井ノ口雄大、パートナー、ライフサイエンスプラクティスチーム

はじめに

パイプラインへの投資を実際の収益源に変える能力を示すR&D生産性は、バイオ医薬品企業の経 営者にとって最も重要な課題のひとつとなっています。しかしながら、イノベーションサイクルの長さと医薬品開発特有の不確実性により、それほど重要でありながらもR&D生産性を測定することは難易度が高いことで知られています。

根本的に、R&D生産性は投資1ドルあたりの収益で定義されます(図1参照)。この上位概念は、さらに次の2つの重要な要素に分けることができます。

  1. R&Dプロセスにおける効率性:R&Dに対する投資1ドルあたりの承認取得数により測定。ある予算内で、企業の研究努力からもたらされた成果を示します。
  2. 上市における収益性:承認を取得した医薬品ごとの収益により算出。適切な市場参入、商品化戦略、ライフサイクル管理を通じて、製品の商業的可能性を最大限に引き出せる企業の能力を示します。

図1

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R&D productivity framework

図1

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R&D productivity framework

これまでのR&D生産性の測定では、ごく一部の企業を対象とした古いデータや不透明な手法、または限定的な範囲など、直面する課題が多くありました。しかしながら、バイオ医薬品業界は大きな転換期を迎えており、R&D生産性がどのように進化しているかを理解するためにも、透明性の高い最新のアプローチを導入することがかつてないほど重要になっています。

このL.E.K.コンサルティングのエグゼクティブインサイトでは、R&D生産性の2つの重要な要素について検討し、売上高上位15社のバイオ医薬品企業とその他の企業(中小企業)のR&Dの効率性と有効性を比較します。1

これらのインサイトは、変動する業界におい て、R&D戦略についての知見を広げ最適化するための重要な役割を果たします。業界の異なるセグメントにわたるR&D生産性の意味合いを理解することにより、相互の強みを活かしながら、生産性を高め、医薬品開発と商品化において進化する課題と機会に対応することが可能になります。

R&D効率性では中小企業が大手製薬企業を上回る

科学技術やオペレーション効率が著しい進歩を遂げている一方で、バイオ医薬品業界のR&D生産性は低下の一途をたどっているとの見方が業界内で一致しています。このことはは、過去10年間にわたり拡大する業界のR&D支出と収益成長率の差からも明らかです。2これは、効率性が着実に低下していることに起因しており、この傾向は過去50年間にわたり続いています。3

まずます複雑化する臨床試験がR&D生産性の低下の背景にある主な要因です。規制要件の変更 と、グローバル規模で急速に変化する臨床試験をとりまく環境により、これらのプログラムの規模と範囲は著しく拡大しました。このことは、期間の長期化、患者登録の複雑化、投資コストの増加につながりました。結果として、R&D費用 1ドルあたりの新たな承認取得数は過去数十年間にわたり減少しました。
興味深いことに、R&D投資に対する新薬承認取得の効率性において、大手製薬企業は中小企業を下回っています(図2参照)。ライフサイクルマネジメントでの承認取得を考慮に入れた場合、多少縮まりますが、その差は依然として明らかです。

これは、売上増加を目的として、キイトルーダ、ヒュミラ、デュピクセントなどメガブロックバスターで ある特異な医薬品に依存していることに部分的に引き起こされています。高い目標である収益と投資収益率の内部基準を達成するために、大手製薬企業は市場潜在力が最も高いプログラムの活動に注力しています。これらは、一般的にライフサイクルマネジメントの機会をより多く提供します。これらの医薬品は革新的な価値を生み出す一方で、R&D投資の水準を著しく引き上げます。そのため、市場での成功を収めるためには相当な資金と時間を要します。大手製薬企業によるブロックバスター医薬品への大きな依存は、多くの場合、収益性(影響力と収益が大きい治療法)を優先する代わりに、効率性を犠牲にします。そのため、R&D投資の範囲内で可能な機会の数と多様性に限界が生じ、より幅広い医療ニーズに対処できるR&Dポートフォリオが持つ潜在的な効率性を低下させます。

図2

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R&D efficiency: R&D investment per approval by company type, including number of NME and NME + LCM approvals per $1B in R&D

図2

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R&D efficiency: R&D investment per approval by company type, including number of NME and NME + LCM approvals per $1B in R&D

大手製薬企業は有効性で上回り、承認取得数ごとの収益が高い

商業規模と能力の優位性により、大手製薬企業は中小企業と比べ、一貫して高いR&D収益性を示しています。2015年から2023年の間で、大手製薬企業が承認を取得した新規化合物(NME)のピーク収益の平均値は約27億ドルでした。これは、中小企業のNMEの平均値である約10億ドルを大きく上回っています。過去と2030年までの予測期間を織り込んだこの分析では、収益創出における大手企業の強みが明らかになっています(図3参照)。

図3

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R&D effectiveness: Average (Median) NME Peak Revenue by Company Type

図3

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R&D effectiveness: Average (Median) NME Peak Revenue by Company Type

興味深いことに、大手製薬企業が前臨床の段階において発見または買収した新薬候補は、臨床開発中に買収またはライセンス取得した場合よりも平均的に高い収益を生み出します。これは、ポートフォリオの優先順位に関するより厳しい基準や、これらのアセットに対するライフサイクルマネジメントへの投資を早い段階で行える能力が主な要因となっています。

中小企業は、限られた資金へのアクセスや規模における能力の不足により、しばしば深刻な財政的制約下に置かれることがあります。結果として、独自に開発や商品化を行えるアセットのみに注力し、費用効率が高く、その時に適したR&D投資を優先させます。これらの企業では一般的に、より大き な市場を対象とする参入障壁が高い治療法に対して、開発と商品化を完結するのに必要なリソースが不足しています。この制約を克服するために、これらの治療法を市場に投入できる臨床的専門知識と商業インフラを備えた大手製薬企業との提携が余儀なくされるケースが多くあります(図4参照)。

図4

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Conceptual model of R&D efficiency and effectiveness

図4

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Conceptual model of R&D efficiency and effectiveness

バイオ医薬品企業の経営者が取るべき戦略的行動

イノベーションを推進する上で、大手と中小の製薬企業は異なる役割を果たしながらも、相乗的な効果を担っています。中小企業は斬新なアイデアを生み出し、大手企業はそれらのアイデアを市場をリードする治療法に変えることができる規模とリソースを提供できます。バイオ医薬品のエコシステム全体にわたり、新たな機会を解き放ち、より大きな価値を推進するために、大手と中小が担うこれらの相互効果を発展させていく必要があります。

大手製薬企業の経営者は、R&D生産性を具体的に次のように移行させる必要があります。

  • 収益の成長につながる超ブロックバスターとなる特異なアセットを作り出すために、目標を十分に達成できるポートフォリオを構築する。そのために、ポートフォリオの優先付けに関するより厳しい基準を保つ。
  • 初期段階の科学研究へのアクセス、臨床開発 におけるスピード、治療法の適用範囲の拡大、および開発の成功率を最適化することにより、社内のイノベーション創出に投資する。大手製薬企業が前臨床の段階において発見または買収した新薬候補は、開発の後期段階において取引コストを掛けて外部から取得した場合よりも、平均的に高い収益を生み出します。
  • より選別された案件に絞って事業開発を行う。大手製薬企業において、事業開発は非常に重 要な活動であることに変わりはありません。しかしながら、R&D生産性を向上させる上で高いコストが掛かる可能性があります。そのため、大手製薬企業は、R&D生産性に対する事業開発活動の貢献度を慎重に考慮し、状況に応じてこれまでとは異なるアプローチをとる必要があります。

また、中小企業の経営者は、次のことに集中的に取り組む必要があります。

  • R&D効率性の維持と向上。これまで中小企業は、少数チーム、限られた資本、効率性重視により優れた成果を収めてきました。しかし、成長するにつれ、高価値な資金調達によりさらに大きな資本プールへのアクセスが可能になると、この重要な要素を失う恐れがあります。R&Dの効率性を維持するためには、初期段階のプログラムにおいて機動性と財務規律を重視し、最小限のリソースの消費で最大限の効果が得られるよう適切に設計された実験や臨床試験を優先していく必要があります。適応性と規律を保つことで、革新的で機敏性のある文化を犠牲にすることなく規模の拡大を図ることができます。
  • リードアセットの臨床開発の再検討。中小企 業は、初期の臨床 PoC(Proof of Concept)を確保するために、ニッチな治療法に対してリードアセットの開発を集中させる傾向があります。多くの場合、このアプローチをとる背景には財政的制約がありますが、長期的には将来性に制限を加えてしまう可能性があります。これらの企業の経営者は、可能な限り、規模が大きく価値の高い治療法をターゲットとした野心的な戦略を検討していく必要があります。達成するためには資金調達や提携における工夫が必要になりますが、これらの分野を積極的に探索することは、より高い企業価値と株主価値をもたらすことにつながります。
  • 価値を維持するための取引の検討。バイオテクノロジーのプラットフォームは、予想していなかった治療への適用が判明することがしばしばあります。そのため、単独で参入できる小規模範囲を対象とした治療法と、大手製薬企業との提携を通じた規模の大きい競争市場を対象とした治療法との間での戦略的なバランスが必要となります。資産価値を最大限に引き出すために提携が必要である場合、早い段階で価値を過度に 手放してはいけません。共同開発や共同販売契約、有利なマイルストーンペイメントなどを通じて、長期的なメリットを確保できるよう取引をまとめる必要があります。

これらの戦略を優先的に実行することで、バイオテクノロジーと製薬業界の経営者は、イノベーションと規律を重視したプロセスを通じて、進化と競争の激しいバイオ医薬品のエコシステムの中で効果的なかじ取りを行うことができます。その結果、R&D生産性を高め、継続的な成功を収めることにつながります。

本稿に対してご協力をいただいたL.E.K.ヘルスケ ア・インサイト・センターのジェニー・マッキー氏とイーサン・ヘルベリ氏に著者から感謝の意を表します。

詳細については、こちらまでお問い合わせください。

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巻末注
1バイオ医薬品企業上位15社は、2024年のバイオ医薬品による収益が250億
ドルを超える企業をもとに分類(Evaluate Pharmaによる推定値)。上位15社以外の企業は、その他の革新的なバイオ医薬品とバイオテクノロジー企業として定義(ジェネリック医薬品、機器、サービス、プラットフォーム、テクノロジーを扱う企業を除く)。

2Genengnews.com, “The Great Pharma Wasteland”, https://www. genengnews.com/topics/drug-discovery/the-great-pharma- wasteland/

3Nature.com、「イールームの法則を破る」、https://www.nature.com/
articles/d41573-020-00059-3

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未来の成長への道を切り開く:APACにおける2025年Medtech市場の展望


Key takeaways

Rising Demand in APAC's Medtech Market: With a projected growth to $140 billion by 2025, the APAC region is a hub of innovation in personalized healthcare and digital technologies, driven by economic expansion and shifting healthcare needs.

Navigating Market Access and Reimbursement Hurdles: Diverse regulatory landscapes and stricter cost-effectiveness criteria demand tailored strategies for medtech companies, with governments exploring innovative funding models like bundled payments and capitation.

Strategic Partnerships and Localization: Success in APAC requires tailored strategies, including local production, distribution partnerships, and navigating diverse regulatory frameworks to stay competitive.

Investment Opportunities on Innovation Amid Challenges: Private equity activity remains robust despite macroeconomic headwinds, with growing focus on telehealth, AI, and robotics across major markets like China, India, and Southeast Asia.

世界人口の約60%が集中するアジア太平洋(APAC)地域では、Medtechへの支出が世界の約30%を占め、Medtechの未来において重要な役割を果たします。活発な市場が集まるAPACは、変化する規制、技術の進歩、人口動態による医療需要の変化など、急速に進化している戦略的な課題に特徴付けられています。個別化医療によるソリューションとデジタルイノベーションへの関心がますます高まる中、競争環境はさらに複雑になっています。これらの要因を前提として、L.E.K. コンサルティングは、2025年にAPAC市場を狙うMedtech企業にとって、最も重要であると考えられる課題について説明します。 

視野を広げる:APACにおける2025年Medtech市場の成長予測 

APAC地域には、新興市場から高度な先進国市場まで、さまざまな市場が存在します。APACのMedtech産業は、年平均成長率5%で、2023年までに約1,210億ドル(メーカー出荷価格)、2025年までには約1,400億ドルに達すると予測されています(図1参照)。医療機器市場は全体的に安定した成長を維持しています。一方で、体外診断用医薬品(IVD)市場は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行による急成長の後、COVID-19前の成長パターンに戻り、結果として、2023年はわずかな減少となりました。 

APACのMedtech市場は、遠隔医療や精密医療などの動向により、高度に個別化された医療技術への高まる需要の影響を受けています。地域全体にわたる経済成長、慢性疾患の有病率の増加、市場アクセスや入手容易性の改善など、これらすべてはAPACにおけるMedtechエコシステムの発展に関与する重要な要素です。中国国内におけるイノベーションへの注力や日本の高齢化といった地域動向もまた、市場の拡大をさらに後押ししています。

図1

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Figure 1 APAC medtech market size

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Figure 1 APAC medtech market size

APAC地域におけるMedtechの大手企業と新興企業 

継続的な課題がある一方で、Medtech企業にとって、中国は依然としてアジア太平洋地域内の魅力的な市場となっています。世界人口の約20%を占める中国は、世界で2番目に大きいMedtech市場を有し、ほぼ全ての疾患や病状において膨大な量の患者集団を提供します。2023年までに、65歳以上の人口は2億1,000万人を超え、全人口の15%以上を占めています。また、65歳以上の人口の増加率は約5%で推移しています。この傾向は、医療や関連するサービスに対する著しい需要を示しています。 

日本は、最近の為替変動をよそに、APACのMedtech分野で依然として有利な立場を維持しています。常に革新的な技術を取り入れ、Medtechにおけるイノベーションの中心地としての機能を果たしています。技術的進歩の例として、日本はロボット市場における地域の主要企業を数多く受け入れ、APACの手術支援ロボット分野の成長を促進する上で非常に重要な役割を担っています。地域全体の傾向と並行して、日本のMedtech市場においても新技術の統合が大きなテーマとなることが期待されています。 

これらの主な市場に加え、インドは費用対効果に優れたイノベーションや現地生産化への取り組みにより、Medtech産業の中心的存在としての役割を強固なものにしています。2023年に制定された国家医療機器政策で同国は、2030年までに年間15%を超える成長を目指しており、政府による市場拡大のための強力な支援を示しています。人口動態の優位性と合わせると、インドは大きな成長機会を持つ国として位置付けられます。 

さらに、APACの他の地域もMedtechの有望な市場として台頭しつつあります。特に、医療制度の整備が比較的遅れている東南アジアの複数の国には、大きな成長の可能性があります。東南アジアの主な国の医療費は、2022年から2032年の間に毎年6%~10%増加すると予想され、この地域において最も急速に拡大する市場となります。インドネシアとベトナムは、中間層の台頭と医療アクセス向上への政府の取り組みにより、拡大が見込まれる有望な地域として突出しています(図2参照)。 

図2

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Figure 2 APAC medtech market revenue by country

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Figure 2 APAC medtech market revenue by country

市場アクセスのハードル:変化するAPACの償還制度への適応 

APAC地域では、全体的な医療費の増加がMedtechの価格設定と償還の方向性に影響を与えています。これを緩和するために、政府はさまざまな戦略を検討しており、費用対効果を重視する傾向を強めています。このことは、厳格な償還の基準と、革新的な支払いモデルの出現につながりました。例えば、シンガポール政府は複数の医療支払いモデルの検討を始めています。これらには、作業負担をベースとした支払い(処置や入院日数と関連)、一括方式(症状のケアごと)、成果報酬(重要な医療を優先するためのインセンティブ)、頭割り方式(予防医療の促進のために居住者数に応じた定額支払い)が含まれます。 

APAC地域の多様な医療制度と償還制度は、アクセスの拡大とともに、ますます複雑になる規制により、多国籍企業(MNC)の市場参入に困難な課題を提示しています。しかし、審査の迅速化と標準化を通じてアクセスしやすくすること目的として、医薬品規制調和国際会議やASEAN医療機器指令などの協調努力が進められています。この変化の状況は、適切なパートナーを選び、強力な関係を築くことの重要性を明確に示しています。idsMED、Everlife、EBOS、Getzなど、複数の管轄区域にわたる市場に進出しているプラットフォームは、複雑な枠組みの舵取りを行いながら、市場シェアを拡大し、下位層レベルの医療へのアクセスを促進し、重要な資金援助を確保する上で決定的な役割を果たしています。 

中国では、購入量ベース調達制度(VBP)が標準となる予定で、製品カテゴリーと各省の領域において導入が加速されています。最近、5月20日に発表された政府指令「VBPの増進と拡大のための地域協力の強化に関する通知」では、今後のVBPの適用において各省間または全国レベルでのさらなる協力と均一化が求められています。この政策は、VBPの導入がより一層加速されることを意味し、政府当局による促進への取り組みが明確に示されています。重要なVBPの適用では、さまざまな製品カテゴリーにわたり、病院に対して平均50%以上の値引きが予想されます。Medtech企業は、急速に変化する環境の中で競争力を維持するために、市場進出(GTM)のアプローチから始まり価格設定や全体的なオペレーションまでビジネス戦略を見直す必要に迫られるでしょう。 

MedtechのAPACにおける戦略的パートナーシップ 

APAC地域への参入、GTM、さらなる市場獲得の成功には、買収、グリーンフィールド投資、強力な販売パートナーシップを戦略的に組み合わせることが一層必要となってきています。この多様で複雑な地域に対する最も効果的なアプローチを特定する上で、この市場の複雑な課題を理解することが非常に重要です。 

まずは、GTMモデルを検討するにあたり、市場や製品、また企業の大きな目的を一致させる必要があります。APACには多様な規制があり、それぞれに対応するコンプライアンス戦略が必要です。そのため、規制を取り巻く状況は重要な要素となります。公的医療と民間医療に対する依存の比較など、顧客の購買行動を理解することは、市場アクセスにとって極めて重要です。市場の規模と潜在力もまた、販売とリソース配分に影響を及ぼします。より複雑な製品には、専門の販売員が必要かもしれません。加えて、市場構造により、特に細分化された地域ではローカルパートナーシップが必要になる場合があります。一方で、幅広く規模のある製品ポートフォリオを持つことは、異なる市場において相乗効果を生み出すのに役立ちます(図3参照)。 

図3

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Figure 3 Six key consideration factors for the GTM approach

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Figure 3 Six key consideration factors for the GTM approach

APACの細分化された市場でうまく舵取りしながら、市場進出を目指す多国籍企業にとって、販売パートナーシップは極めて重要です。例えば、MedtronicとZeissはRBGM Medicalと提携を結び、現地の専門知識を活用しながら、公共部門と民間部門において商業化を進めています。同様に、idsMEDは、Bioptimalとの独占的な提携により、シンガポール、フィリピン、マレーシア、タイ、ベトナムなどの重要な市場で、救急医療用製品の販売を効率化しました。  

この地域では、さらに包括的なパートナーシップの方法も模索されています。GEヘルスケアとシノファーム・グループの中国医療機器有限公司は、新興市場向け医療用画像機器の開発、製造、販売の統合を目的として、2023年2月に合弁事業を立ち上げました。両社は30年に及ぶ協力関係にあり、この合弁事業によりシノファームは、ハイエンド医療機器製造の最初のステップを踏み出しました。以来、2023年11月の「SINO IMAGING」ブランドの立ち上げや、Sinopharm Xinguangの内視鏡用4Kカメラシステムの承認などの進展が見られました。このシステムはフルチェーンの4Kデータフローと、進歩した光路設計や製造技術を提供することが報告されています。  

多国籍企業は、現地パートナーのネットワーク、専門知識、規制に関する知見を活用することで、市場参入とさらなる浸透をより効率的に実現することができます。これらのパートナーシップには、保護主義政策と分散調達プロセスが背景にあり、バリューチェーン全体を通じて柔軟な戦略を必要としていることを明確に示しています。企業は、これらの進化する状況がどのようにオペレーションに影響を与えるかを慎重に考慮し、厳しい環境の中で成功するための競争戦略を検討しなければなりません。 

現地生産の増加傾向:APACの政策とMedtechへの影響

APAC地域の政府は、バリューチェーンを高め、国民に信頼ある医療提供を確保したいという意欲から、中国、インド、インドネシアなど、最も長期的な成長の余地があるAPAC最大の市場が、先陣を切ってMedtechのバリューチェーンの国内化を促す政策や取り組みを進めているのは偶然のことではありません。

中国は2020年5月以来、「国内循環」に重点を置いており、国内での供給と消費を経済の主な推進力として重視し、国内生産と現地製品を優遇する政策を進めています。現在、この動きは医療機器セクターにも影響を及ぼしています。特に、551号文書や「バイ・チャイナ」などの政策は、多国籍企業にとって市場への参入障壁となっています。病院は輸入製品を次第に制限しており、輸入製品の購入に対して各省は正当な理由を求めています。この長期的な活動は、国内のMedtechメーカーを強化することを目的とした「中国製造2025」や第14次五カ年計画などの政策に裏付けられていまする(図4参照)。 

図4

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Figure 4 Hospital’s attitude toward the use of imported medtech products

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Figure 4 Hospital’s attitude toward the use of imported medtech products

インドは、2014年に「メイク・イン・インディア」政策、2020年に「生産連動型優遇策」制度を導入しました。これらもまた、現地の市場に影響を与え、多国籍企業は現地のインフラの見直しを迫られています。最近の例として、Medtronicは3月に、米国以外で最大の研究開発施設のひとつであるインドのハイデラバードのMedtronic・エンジニアリング&イノベーションセンターに3億5,000万ドルを投資する計画を発表しました。同様に、シーメンスヘルスニアーズは、2025年までに1億9,770万ドルを投資し、インドのバンガロールにイノベーションハブを設立する予定です。これらの動きは、多額の投資を呼び込む上で国内政策の影響力が増していることを明らかにしています。 

さらにインドネシアでも、国内生産拡大のために政府による同様の取り組みが行われ、2014年に国産化率(TKDN)が導入されました。医療機器の輸入品は、政府調達において、現地調達率の要件を満たすことが前提条件となります。インドネシア保健省によると、2023年第3四半期時点で、政府の電子カタログに記載されている製品のうち50%以上がTKDN認証を取得済みです。  

市場参入とサプライチェーン構造とがますます密接に関連しあう中で、製造業の強化を目指した何十年にもわたる取り組みが、世界の主要市場においてCOVID-19後の国政の現実政治と組み合わさっています。政府は信頼ある医療提供の必要性に対する認識を強めており、地域の将来性のためへの投資を続けています。関係者による地域全体の継続的なイノベーションと協力に支えられながら、Medtechの現地化の有効性を高めるためのさらなる動きが予想されます。APACで活動する企業にとって、現地生産のための投資を検討することは極めて重要な課題となっています。トレードオフを考慮しながら、しっかりしたビジネスケースを作成し、長期的な成功を支えるための存続可能なビジネスモデルを構築する上で、サプライチェーン、製造拠点、商機を慎重に評価することが不可欠です。多国籍企業がこの地域における規制や競争環境の変化にうまく対応していくためには、これらの戦略的評価を行うことが極めて重要です。 

デジタルヘルスとロボティクス:イノベーションを先導する  

COVID-19パンデミックがきっかけとなり急増した遠隔医療は、その後、遠隔医療のインフラ、ウェアラブル、遠隔による検査や治療技術の進歩により、外来診療や在宅医療サービスにおいて大きな進化を遂げています。APAC地域全体では、中国を始めとして遠隔医療の導入が増え続けており、特に、インドネシア、フィリピン、マレーシア、インドなどの東南アジアの市場で急増しています。 

同時に、APAC全域においてロボティクスが医療提供を新たに形作っています。中国では、国内の100社以上の企業が、整形外科、腹腔鏡検査、神経科、歯科などの主なサブセグメントを網羅する手術支援ロボットを開発しています。2022年には、前年を大幅に上回る、少なくとも15件の手術支援ロボット製品が中国国家薬品監督管理局により承認されました。APAC全域では、政府による手術支援ロボットへの支援も手厚く、現在、日本、韓国、台湾では公的保険で多くの手術がカバーされます。 

2024年には、医療への人工知能(AI)の導入により、業務効率と医療の質において新たな時代を迎えました。医療へのAI導入の割合の点で、APACは米国に次いで世界第2位に位置付けています。初期のアプリケーションは、主にスケジューリング、文字起こし、患者管理などの業務に特化していました。診断支援AIは、今ではより広く受け入れられており、この分野への多額の投資とイノベーションを示唆しています。一方で、AIの可能性を十分に引き出すには、変化する規制への対応、データガバナンス、戦略的なデータ活用が、安全性と有効性を確保する上で非常に重要な鍵となります。 

従来の医療機関によるこれらの技術の導入が進むことにより、より患者を中心としたデジタルベースのアプローチへの移行が必然となっています。企業は競争力を維持するために、デジタルインフラへの投資と、急速に変化する市場需要に対応するための革新的なツールを備えておかなければなりません。 

APACのMedtechとプライベートエクイティ:厳しい環境での投資機会の舵取り 

APACのMedtech市場の投資動向は、成長の機会とマクロ経済の逆風の兼ね合いにより形作られています。市場関係者は、今年から来年にかけて勢いが戻ることに注目しています。日本も直面する金利上昇や為替変動は、取引評価額や資金調達に影響を与えています。一方で、医療ニーズの拡大と高齢化を背景として、プライベート・エクイティ(PE)投資家にとってAPACは引き続き魅力的な地域となっています。特に、医療は引き続きAPACで最も活発なセクターのひとつで、2023年に行われた買収のうち、テクノロジー領域の件数ベースで、メディア・通信、消費者セクターに次ぐ第3位となっています。MedtechセクターのPE活動に関しては、前四半期と比べて2024年第2四半期は金額ベースで減少した一方、取引数は安定していました。 

地域別では、4月にインドで、国内最大の眼科機器・眼内レンズメーカーであるAppasamy Associatesの経営権がWarburg Pincusにより取得されるなど、大型取引により大きな実績を残しました。その他のPEが保有する主な企業の動向として、Everstone CapitalのTranslumina TherapeuticsとEverlife Holdingsの合併があります。この重要な合併は、最終的に高値が付いた新規株式公開に結びつき、APACのMedtechセクターにおいて、今年最も注目された取引のひとつとなりました。さらに、2022年2月22日にWarburg Pincusは、インド最大の医療機器メーカー、Meril Groupの親会社であるMicro Life Sciencesの少数株を取得するために約2億1,000万ドルを投資することに合意しました。 

中国は、グローバルサプライチェーンと巨大な市場潜在力における重要な役割、また技術品質に対する多国籍企業による認識向上に支えられ、依然として投資対象の中心となっています。顕著な例として、歯科ソリューションを提供するスイスのStraumann Groupが、上海にある口腔内スキャナーメーカーのAlliedStarを買収しました。この合併により、同社の製品は今年APACで発売されたStraumannのAXSデジタルプラットフォームに統合されます。一方で、規制強化と地政学リスクにより、中国でのイグジットの魅力が薄まっており、投資家はインドや東南アジアの国々など、より安定した市場への投資分散を促されています。これまで中国に重点を置いていたNovo Holdingsは、シンガポールの医療技術企業、Doctor Anywhereへ投資を行い、近年これらの地域にもテリトリーを広げています。Carlyle Groupも、日本の医療ニーズに対応するために、デジタル療法のMedtechリーダーであるCureAppに出資し、日本での投資を拡大しています。 

東南アジアでは、市場の発展とともに主な投資領域も変化しています。デジタルヘルス、遠隔医療、医療サービスが地域の主な投資テーマとしてフォーカスされており、PEは技術の向上、サービス提供や市場範囲の拡大に重点を置いています。東南アジアの遠隔医療は、大きな成長の可能性がありながら過小評価されているため、とりわけ魅力的な市場となっています。デジタルヘルス分野では、インドネシアのHalodocやシンガポールのSpeedocなどの企業に対して多額の投資が集まっています。 

さらには、PEが援助する複数のMedtech企業がこの地域の市場に参入する予定であり、これはAPACのイノベーションを後押しするPEファンドの役割を強調するものとなっています。Coronet Venturesが出資しているAevice Healthは、喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)モニタリングのための世界最小スマート聴診器であるウェアラブルデバイスを開発し、8月に700万ドルの資金を確保しました。Taiwania Capitalが主導するシリーズDラウンドで600万ドルを調達したAPrevent Medical Inc.は、片側声帯麻痺に対して初めての調整可能なインプラントを提供します。その他の注目すべき企業には、AlfaleusTechnology(仮想現実を活用した弱視治療)やMedipixel(AIによる冠状動脈の画像分析システム)などがあります。 

APAC戦略を立てる投資家は、今後を見据えながら、地域力学の変化を考慮に入れ、AIやロボティクスなどのイノベーションのトレンドに対応しなければなりません。より厳しい市場環境の中で、資金提供者は効果的な戦略を通じて流動性の懸念に対して積極的に対応し、投資サイクルの早いタイミングで収益への自信を植え付ける必要があります。 

終わりに 

APAC地域が医療技術の未来を決定づける新たな地域であることは明らかです。APACは、巨大な人口に加え、Medtechの世界総支出のうち大きな割合を占め、単なる成長市場にとどまらず、イノベーションと変革における重要な原動力となっています。進化する規制の枠組み、急速な技術の進歩、医療ニーズの変化に形作られるダイナミックな環境の中で、Medtech企業は戦略の修正が求められています。先見の明のある企業が、複雑であると同時に豊富な機会が存在する地域で足場を築くために対処すべき重要な課題に焦点を当てることがこの文書の目的です。 

2025年を見据えたAPACのMedtechセクターにおける成功への道は確固たる行動にあります。企業は現地パートナーとの関与を深めながら、絶えず革新し、規制や償還の複雑さに対して機敏に対処しなければなりません。個別化医療とデジタルイノベーションの台頭により、現地生産能力の強化に重点を置いた積極的な対応が求められます。行動が必要なのは明らかです。先見性、協力関係、地域全体の医療に有意義な成果をもたらす取り組みを通じ、APACのMedtech市場の巨大な可能性を戦略的に解き放つ時がやって来きました。 

詳細については、当社までご連絡ください。 


 

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ニッチからスタンダードへ:放射線治療のターニングポイント


Key takeaways

Radiopharmaceuticals have the potential to transition to mainstream use, driven by their dual role in diagnostics and therapy, especially in oncology.

Recent commercial success with beta-emitting treatments like Lutathera and Pluvicto signal strong growth, while a rich overall pipeline increasingly diversifies towards emerging alpha-emitting isotopes and novel ligand targets.

Biopharma companies interested in radiotherapeutics need to carefully assess investment in the right innovation areas – potentially via M&A – alongside a subsequent build of a broader radiotherapeutics presence.

To support a successful launch, biopharma must consider commercial capability build-out and decide whether to in-house or outsource often complex supply chain and manufacturing.

診断と治療において放射性医薬品の使用がますます拡大 

放射性医薬品は、がんをはじめとするさまざまな治療分野において、診断と治療の両面で活用される進化著しい化合物群です。その二重の機能性により、現在多くのパイプライン開発が進められており、M&Aにおいても高い関心を集めています。企業がプレシジョン・メディスン(精密医療)の実現を目指す中、放射性医薬品は今後さらに普及していく可能性を秘めています。 

放射性医薬品の化合物は、リンカーでつながった放射性同位体とリガンド(標的部位)を組み合わせで構成されます。これにより、標的となるマーカーを発現する体内の特定の細胞に放射性同位体を選択的に届けることができます(図1参照)。 

図1

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Radiopharmaceutical design principles and types of radiopharmaceuticals

図1

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Radiopharmaceutical design principles and types of radiopharmaceuticals

診断用途では、同位体は患者の体外に放出される放射線を発し、撮影後数時間以内に減衰する適切な半減期を持つ必要があります。。主な技術として、PET(陽電子放出断層撮影)とSPECT(単一光子放射断層撮影)が挙げられます。PETでは、18-Fなどの陽電子を放出する同位体が使用されます。PETは、早期診断や進行状況のモニタリングを行うために極めて重要な高解像度の3D画像を提供します。SPECTでは、99-mTcなどのガンマ線を放出する同位体手法であり、解像度はPETに劣るものの、広く利用しやすい特徴があります。高解像度を提供するPETは、一般的にがんや脳障害の機能的画像診断に利用される一方で、コスト効率が高くより広く利用しやすいSPECTは心臓のイメージングに用いられます。

治療用途においては、放射線医薬品をがん細胞に直接運ぶことができるため、全身の健康な組織に与える損傷を最小限に抑えます。組織への透過力が小さいアルファ粒子とベータ粒子により、周囲の組織への影響を最小化します。このことは、外部放射線治療に対する腫瘍の感受性を高めることを目的としている放射線増感剤(NBTXR3、AGuIXなどの非放射性の薬剤)とは大きく異なります。放射性医薬品による治療は、アルファ線やベータ線を放出する同位体で行います。アルファ放射体(225-Acなど)は、極めて局所的に放射線を放出します。小さな塊となったがん細胞を標的とするのに適していますが、新しい治療選択肢であり、まだ十分に実証されていません。反対に、ベータ放射体(177-Luなど)は、より確立された治療法で、低エネルギーで組織への透過力が高く、大きな腫瘍や広がった腫瘍の治療に使用されます。

放射線治療には困難の歴史があります(図2参照)。第一世代の承認では大きな商業上の課題に直面しました。非ホジキンリンパ腫の治療薬として発売されたゼヴァリン(2002年、90-Y同位体)とベキサール(2003年、131-I同位体)は、半減期が比較的短い(約2.7日)同位体で、中央集約型の製造施設に依存していたため、地理的な制約が生じ、治療可能な患者の範囲が限られていました。またリツキサンが医師に好まれていたため、市場浸透はさらに限定的でした。

ゾーフィゴ(2013年、223-Ra)は、2013年に初めて市場投入されたアルファ放射体でした。第一世代に直面した多くの課題に対処しましたが、特に末期前立腺がんを対象として高い有効性が認識されていたにもかかわらず、商業的には最大売上高は約4億ドルで、期待されていた15億ドルに届くことはありませんでした。1 その要因として、ジョンソン・エンド・ジョンソンのザイティガとの併用時の安全性懸念や、非放射線治療の新規治療法の登場が影響したと考えられます。 

図2

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Resurgence following initial hurdles

図2

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Resurgence following initial hurdles

放射線治療開発の初期の困難を超え躍進へ 

近年、ベータ線を放出する177-Lu化合物は、明らかに商業的な成功を収めており、これらは主にノバルティスの転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)向けに開発したプルビクト(2022年)**や、**消化管・膵神経内分泌腫瘍(GEP-NET)向けのルタテラ(2018年)に代表されています。2024年第2四半期のプルビクトの売上高は3億4,500万ドル2で、アナリストはこのブロックバスターとなった治療薬の売上高が2026年までに20億ドル近くに達すると予想しています3。2022年と2023年には一時的な供給不足に陥りましたが、2024年初めにインディアナ州インディアナポリスに新設された4番目の製造拠点によりこの課題は解決されました。

近年の臨床と商業的な検証、およびルタテラの独占権の喪失が近づいていることにより、この分野への関心にさらに拍車が掛かっています。治療薬パイプラインも急成長しており、2024年9月時点における開発中のプログラムは100を超え(図3参照)、過去5年間で2倍に増えました。治療法は主に腫瘍領域の適応症に重点が置かれています。対照的に診断用途では、心臓疾患と神経疾患が追加の主な治療領域となっています。 

図3

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Rich pipeline increasingly diversifying towards novel isotopes and targets

図3

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Rich pipeline increasingly diversifying towards novel isotopes and targets

ベータ線を用いた治療においては、177-Luの後期臨床開発が活発化しており、またルタテラのジェネリックの開発も進んでいます。銅67(67-Cu)は代替の同位体として注目されていますが、まだ十分に実証されていません。177-Lu薬剤で臨床試験を行ったリスク軽減リガンド(PSMA、SSTRなど)と組み合わせて、主にフェーズI/IIの開発初期段階にあります。

アルファ線を用いた治療では、最適な同位体を巡る議論が続いています。ゾーフィゴが223-Raを初めて上市したにもかかわらず、研究活動の関心は225-Acに向いており、パイプライン薬剤において177-Luに次ぐ波として位置付けられています。関心を引いている理由は、約10日間の半減期と、比較的標的分子につながりやすい特徴によるものです。しかし、研究者の間では212-Pbの人気も高まっています。これは、212-Pbが約10時間という大幅に短い半減期を持つことにより、少ない回数でより多くの量を投与(分割投与)でき、投与スケジュールの最適化をはかることが可能になるためです。また、健康な組織に対する毒性とのバランスを取りながら治療効果が得やすくなります。

他の腫瘍領域の適応症における新規標的の登場により、PSMAやSSTRを標的とするリガンド以外への関心が業界で高まりつつあります。特に、FAP(線維芽細胞活性化タンパク質)は、さまざまな腫瘍における治療と診断の可能性により、初期段階の開発活動が見られます。 

バイオ医薬品企業が放射線治療への参入の可能性を検討する上で考慮すべき重要な点 

放射性医薬品分野はこれまでにない関心を集めています。バイオ医薬品企業には、参入を成功させるために考慮すべき重要な要素がいくつかあります(図4参照)。同位体、リガンド、治療適応など、適切なイノベーション領域への初期投資に加え、広範にわたる放射線治療のプラットフォームを構築するための追加投資について慎重に検討する必要があります。上市を成功させるためには、販売能力の構築について考慮し、製造を自社で完結するか外部に委託するか、非常に複雑な判断を行わなければなりません。特に、半減期が短い(つまり、数時間で減衰する)放射性同位体は、従来とは異なる製造やサプライチェーンのインフラが必要であり、運用面や財務面に与える影響が大きい可能性があります。

バイオ医薬品企業にとって、M&Aは放射線治療への迅速なアクセスを提供するため、近年、大手製薬会社によるM&A活動が活発になっています。2023年2月以降に発表された放射線治療薬に関する主な買収案件6件のうち、4件はノバルティス、アストラゼネカ、ブリストル マイヤーズ スクイブ、イーライリリーによって行われ、買収価値は総額で86億ドルに上りました。サノフィなど他の大手製薬会社も開発の初期段階にある企業との契約を通じ、放射線治療における存在感を高めています。

図4

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Considerations for biopharma entry into radiotherapeutics

図4

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Considerations for biopharma entry into radiotherapeutics

R&D投資に注力するバイオテクノロジー企業の増加に支えられたパイプラインの拡大により、M&A活動が活発化し続けています。L.E.K.コンサルティングでは、放射線治療薬の開発パイプラインポートフォリオを持つ70社以上を追跡しています。そのうち約3分の2は非上場企業で、拠点は北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地域にほぼ等しく分散しています。

中小型株上場企業の手元資金の中央値は約2,000万ドル、企業価値の中央値は約1億2,500万ドルで、ある程度の資金猶予期間があります。2020年と2021年には上場企業への資金が急増しましたが、これは数社のIPO(クラリティ・ファーマシューティカルズなど)によるもので、その後は、2023年のレイゼバイオのIPOを除き、より緩やかなペースとなっています。同様に、過去2~3年における非上場企業のシリーズAまたはシリーズBへの投資額の中央値は4,000万~5,000万ドルに達しました。放射性医薬品のスタートアップは、2023年に約10億ドルのプライベート資金調達を行いました。これらのアーリーステージのスタートアップの多くは、PSMAやSSTR以外の新しいリガンドの研究を手掛けています。

既存の製薬会社が適切なM&Aターゲットを見極めるためには、ポートフォリオの臨床と商業的な将来性に加え、サプライチェーンと製造能力を考慮に入れる必要があります。サプライチェーンの安定性確保のための取り組みは、パートナーシップ活動から明らかであり、2024年1月から4月の間に、同位体サプライヤーとバイオ医薬品企業との間で4件の供給提携が発表されました。。

バイオ医薬品企業は、自社製造するか外部委託するか判断する必要があります。製造とサプライチェーンの改善は重要なテーマであり、引き続き重点的な投資分野となる見込みです。同位体の半減期と、異なる製造方法(ジェネレータや粒子加速器など)についても引き続き慎重な検討が必要です。特に製造方法に関しては、設備投資、立ち上げやすさ、フットプリント、運営に必要な専門性の間でのトレードオフを考慮に入れます。 

結論 

イノベーションと戦略的買収が続いていることは、この分野の成長力と有望な軌道を際立たせ、放射線治療薬の使用がより主流となる重要な転換点であることを示しています。

L.E.K.では、放射線治療薬における機会と課題を探索するため支援を行っています。詳細については、当社までご連絡ください。急速に進化しているこの分野で成功を収めるための戦略的アドバイスを提供します。 

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巻末注
1「アルファ放射性リガンド療法の商業とビジネスの側面」 Emanuele Ostuni、Martin R G Taylor (2023年) Frontiers in Medicine、https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9932801/#B43
2ノバルティス(2024年)、「中間財務報告書(要約) - 補足データ」 https://www.novartis.com/sites/novartiscom/files/2024-07-interim-financial-report-en.pdf
3フィアース・ファーマ(2023年)、「ノバルティスがプルビクトの新規患者受け入れを停止、製造拡大を急ぐ一方で放射線治療の供給不足に陥る」https://www.fiercepharma.com/manufacturing/novartis-halts-pluvicto-new-patient-starts-struggles-radiotherapy-supply-amid
4サノフィ(2024年)、「プレスリリース:「サノフィ、ラジオメディクス、オラノメッドが希少がん治療における次世代の放射性リガンド治療薬のライセンス契約を発表」https://www.sanofi.com/en/media-room/press-releases/2024/2024-09-12-05-00-00-2944919;サノフィ(2024年)、「プレスリリース:サノフィとオラノメッドが次世代の放射性リガンド治療薬の開発で提携」https://www.sanofi.com/en/media-room/press-releases/2024/2024-10-17-05-30-00-2964590  

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エグゼクティブインサイト — Healing Bytes:アジアと中東における医療データの商用化のための処方箋


Key takeaways

The global addressable market for healthcare data is estimated at nearly €2bn annually, and an individual patient dataset may be worth between €50 and €1,000 or more depending on therapeutic focus and type of data.

Demand for healthcare data is high because it serves multiple purposes, including research and development for drugs and medical devices, refining new artificial intelligence (AI) algorithms, and enhancing operational efficiency for healthcare providers.

Data commercialization represents a significant opportunity for healthcare providers in Asia and the Middle East, underpinned by a notable underrepresentation of these regions in medical research and development (including clinical trials and product R&D) even though they collectively represent approximately 60% of the world’s population.

Ultimate success for healthcare providers is highly dependent on understanding underlying data requirements, price models and routes to market. Buyers’ requirements are heterogeneous and not all can (or should) be met considering the implicit investment to build the necessary capabilities. There are first-mover advantages in building a regional data infrastructure and services.

この記事は、エグゼクティブインサイト 第25巻101号(2023年12月4日)「新たな可能性を引き出す:医療セクターにおけるデータ価値を理解する」の拡大版です。 

医療データの商用化は、アジアと中東で急成長する市場機会を示している

医療機関は、世界全体で約20億ユーロと推定される医療データの市場機会を活用することができます。個々の患者データセットの価値は50~1,000ユーロで、対象となる治療やデータの種類により、それ以上の価値がある可能性があります。これは、新しいモダリティを含む医療機関における医療データの増加、病院による診療記録の世界規模での幅広い採用、個人のデジタルデバイスを通じて記録された外部データにより引き起こされています。特に、アジアと中東は医療の研究開発において著しく過小評価されています。例えば、これらの地域全体で世界の人口の約60%の割合を占めていますが、臨床試験の人口の割合は15%未満となっています。従って、これらの地域のデータは不足しており、非常に価値があると評価されています。

L.E.K.コンサルティングは最近、組織の意思決定者または医療データの購入に影響力を持つ経営幹部200人に対して世界的な調査を実施しました。従業員数50人未満から20,000人以上にわたる組織規模の経営幹部を対象としており、調査の地域は、ヨーロッパ、南北アメリカ、アジアで、回答者には製薬、Medtech、テクノロジー(AIスタートアップや既存のソフトウェア企業など)、健康保険、データ仲介業者の経営幹部が含まれています。この記事は、これらの地域における傾向と力学をより正確に表す目的で、主にアジアと中東の回答者に焦点を合わせています(図1参照)。

図1

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Overview of L.E.K. survey respondents in Asia and Middle East

図1

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Overview of L.E.K. survey respondents in Asia and Middle East

データの記録と商品化

データの記録は、医薬品、医療機器技術、ウェアラブル、臨床サービスの改善や新開発の促進と合わせて、患者の転帰を顕著に改善させることができます。業務生産性や医療機関の効率性の向上に貢献するデータセットもあります。

その上、医療データは、データを共有する側とそれを活用する側の双方に新たな収益源をもたらします。医療サービスの提供者など、データを共有する組織は、データセットや関連サービスへのアクセスに対して課金させることができます。調査では、患者の記録に関する参考価格設定の範囲には著しい差があることが示されています。これらの範囲は、単一エピソードの診療記録は約50ユーロであるのに対し、ゲノミクスの詳細情報を含んだ複雑な臨床データセットは約3,000ユーロにまで及びます。この価値は、他のさまざまな要因にも左右されます。それらの要因には、現在の利用用途やデータを購買する組織の直近のニーズに加え、外来患者、入院患者、診断の設定において相互にデータをリンクさせる機能、および、(理想的には)患者の転帰情報が含まれます。これらのデータを取得することは、新薬の検証や臨床試験の期間短縮などの利点につながります(図2参照)。

図2

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New opportunities for data originators and intermediaries

図2

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New opportunities for data originators and intermediaries

機会の規模

医療業界は膨大な量のデータを生み出しており、ある推計によれば、世界のデータ量の約30%を占めています。医療データの増加は近年顕著であり、この傾向は今後も継続すると見られます。

医療分野の世界の総データ量は2020年の2,000エクサバイト程度から、2025年には10,000エクサバイトを超えると予測されています。年間成長率は36%1で、製造、金融サービス、メディア・エンターテイメントなどの他の業界のデータよりも速いペースで推移しています。

調査から、外来診療データの獲得可能な最大市場規模は年間約20億ユーロと見積もられています。取得したデータがすでに存在するため、臨床の通常オペレーションと比べ、EBITDAマージンははるかに高いことが期待されます。

アジアと中東の人口データの不足

アジアと中東全体で世界の人口の約60%の割合を占めていますが、臨床試験や製品の研究開発といった医療の研究開発において、同地域は著しく過小評価されています。このギャップが、この人口サブセットのデータへの需要を生み、アジアと中東の医療機関にさらなる収益成長率の機会を作り出しています。

米国食品医薬品局(FDA)の2020年分析によると、世界の臨床試験参加者の大多数(76%)は白人が占めており、11%を占めるアジア人との大きな隔たりを浮き彫りにしています。2 同様に、さまざまな学術論文3の中でも、中東の人口が臨床試験の対象として極端に少ないか、ほぼ皆無であることが強調されています。

今回の調査では、アジア太平洋地域の患者データの需要が全般的に最も高い中で、製薬業界は例外であることがわかりました。これは、北米やヨーロッパなどの旧来の市場と比べ、同地域の医薬品市場の規模が依然として非常に小さいことが理由となっています。それでもなお、アジアと中東は最も高い成長が期待される地域であり、製薬業界の関心も高まっていくことが予想されます(図3参照)。

図3

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Respondent interest in healthcare data by geography

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Respondent interest in healthcare data by geography

重要な成長の原動力

医療領域におけるデータの急速な拡大には、複数の大きな要因が挙げられます。ひとつは、医療機関における医療データの増加です。これは、病院による診療記録の幅広い採用、ビデオキャプチャーやデジタルパソロジーなどの画像技術の進歩、オミックスデータ(ゲノミクス、トランスクリプトミクス、メタゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクス、インフラモミクス、リピドミクス、グライコミクスなど)に関する情報収集機会の増加などの要素に支えられています。また、スマートフォン、ウェアラブル、ホームモニタリング技術などの個人のデジタルデバイスを通じて記録された外部データも大きな役割を果たしています。

将来的なデジタルヘルスの発展において、アジアはますます重要なプレーヤーとなっています。これは、巨大な人口、モバイル技術の普及、ウェアラブルデバイスの利用拡大により牽引され、データ主導型で消費者中心の医療への移行により、従来の制度化されたモデルに変化をもたらすことが期待されます。例えば、アジアと中東の国では、病院の電子医療記録(EMR)や地域で共有される電子医療記録(EHR)の採用が進んでいます。アブダビ首長国のMalaffi、シンガポールの国家電子医療記録(NEHR)、インドネシアのSatusehatはその一例で、相互運用性を高め、遠隔医療と遠隔ケアを促進し、結果として、病気のパターン、健康トレンド、治療結果など、臨床研究のためのデータマイニングを可能にします。ただし、導入の程度については差があります。

中国では、EMRの導入率が2007年の約19%から、2018年には約86%に増加しました。4 シンガポールでは、すでに2000年代の初めに公的医療機関と民間医療機関ともにEMRが導入されています。マレーシアやインドネシアなど、過去にデジタル化の水準が低かった国でも、現在ではEMR導入の道のりをたどっています。マレーシア保健省は、公共機関の施設においてEMRを標準化することを目的としたパイロットプログラムを2021年に開始しました(ただし、運用開始は2026年以降になる可能性があります)。

製薬とMedtechは、適用性と市場の成熟度の高さにより、最も興味深い顧客セグメントを持つ

主な顧客セグメントと活用例

データとその関連サービスの代表的な消費者には、製薬企業、開発業務受託機関(CRO)、医療技術企業、テクノロジー企業、データ仲介業者、保険会社などが含まれます(図4参照)。

  1. 製薬企業、CRO:医療データはあらゆる段階で重要です。前臨床段階においては、アンメットニーズと臨床試験の被験者候補の特定に役立ちます(薬剤の標的の特定、バイオマーカーの検出など)。臨床開発の段階では、効果的な臨床試験の設計において重要な役割を担います(患者の特定など)。市場アクセスにおいては、価格設定戦略や医薬品の処方行動に影響を与えます。
  2. Medtech:データは、新製品のための潜在的な患者プールの特定や、顧客体験や製品設計への知見を得るのに役立ちます。MedtronicのGI GeniusなどのAI診断支援ツールでは、大腸内視鏡検査から得られた大量の画像データを必要としています。これらのツールの進化が続くことは、製品が発売された段階でデータへの需要が終わる訳ではないことを意味しています。データの商用化には複数の方法が考えられ、これにはパートナーシップによる割引、新技術の採用、マーケティングなどが含まれます。
  3. ビッグテック:AIを活用することで既存のデータセットを向上させることや、AIのトレーニング、消費者向けの新しいMedtechや総合的な医療技術製品の開発を通じて、データは先進技術製品へのアンメットニーズを特定するのに役立ちます。例として、Appleは、AirPods Proイヤホンのソフトウェアアップデートにより、臨床グレードの聴力検査と、FDA(および他の世界の保健機関)の承認を得た上で、補聴器としての使用を目指しています。Appleは同時に、臨床試験とその約1,500人の患者データをベースとしたApple Watchの睡眠時無呼吸検出アルゴリズムについても発表しました。5
  4. データ仲介業者:医療データは、データ仲介業者により、データの匿名化、調整、キュレーション、集約を通じて強化されたデータセットが作成され、販売の目的などに利用されます。また、データの購入や、より高値でのデータセットの購入者を特定することなど、データの仲介や再販も行います。アジアと中東には、すでに複数のデータ仲介業者が存在しています。これらには、インドのTHB(医療企業向けの統合医療データ技術とデータ分析プラットフォーム)、中国のDHC Tech(臨床・研究・管理アプリケーション用に医療データを統合する医療ビッグデータのプラットフォーム)、シンガポールのJonda Health(患者医療データの安全なプラットフォームとデータ変換エンジンを提供するソフトウェア)、イスラエルのSweetch(患者コンプライアンスに重点を置く、製薬企業、Medtech、ペイヤー向けのAIを活用した医療データプラットフォーム)が含まれます。

図4

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Potential use cases of data for target customer groups

図4

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Potential use cases of data for target customer groups

データ利用の主な課題

医療データを扱うアプリは多岐にわたりますが、データ要件は顧客や利用用途に関わらず全体的にほぼ一貫性があります。データ利用に関して、エンドユーザーは主な課題を3つ挙げています(図5参照)。

  1. データのプライバシーとセキュリティ:製薬企業/CROの回答者のうち56%が、データのプライバシーとセキュリティの確保は非常に難しい課題であると答えています。データの発信元が、適切な基準と規制に準拠した方法でデータの取得と匿名化を行っていることを確かめることが最も重要です。
  2. データの品質と完全性の不足:主な懸念として、データセットに明らかなギャップがある場合や、十分な詳細が足りない場合、データの有用性が低下することがあります。
  3. 広範性の不足:多くのデータ利用者は、患者の全体像をより良くとらえるために、外来患者と入院患者の来院情報や、画像センターと臨床結果を関連付けることなど、長期的に追跡できる可能性に関心を持っています。

データ関連のサービス提供を検討するプロバイダーは、これらの共通する課題への対策に注力する必要があります。

図5

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Top three key challenges with patient data vendor in use in Asia and Middle East

図5

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Top three key challenges with patient data vendor in use in Asia and Middle East

医療データは、ソースと匿名性レベルに応じた形態で取得

対象となるアジアの顧客は、医療機関やデータ仲介業者からデータを購入しますが、外来患者のデータプロバイダーが購入先として最も普及しています。データは、患者の匿名性レベルによりさまざまな形態で共有されます。患者の個人情報を保護するために、データに変更を加えるのが最も一般的な方法です。一方で、匿名化を必要としないデータは、複雑な疾患を持つ患者が、より良い治療成果が得られる可能性に動機付けられ、非匿名化に同意した場合に限り多く利用されています。

医療データのソース

調査の回答によると、一般的に、顧客がデータを入手する先のベンダーの範囲は幅広く(図6参照)、用途ごとに平均して2~3社のデータベンダーを利用しています。データプロバイダーとして最も多く挙げられるのは外来診療施設(47%)で、他にも医療データマーケットプレイス(36%)や民間保険会社(31%)も広く利用されています。このことは、これらの組織が持つデータセットの商業的な可能性が認められていることを意味しています。

図6

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Number of data vendors and sources of clinical data by use case

図6

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Number of data vendors and sources of clinical data by use case

この地域の政府は、患者の匿名性を担保しつつ、データの集約を促すための施策をすでに導入しています。例えば、韓国では850以上の医療施設の医療記録を統合するプラットフォームを国が提供しており、My HealthWayを通じて個人の医療データにアクセスすることが可能です。アラブ首長国連邦ではアブダビ投資庁が、医療データの集約と標準化を行い、患者記録を統合する医療クラウド企業のInnovaccerと提携しました。

データ規制

第三者との医療データの共有方法を定めた規制を理解することが大切です。個人データの利用が可能とされる一般的なオプションは次のとおりです。

  1. 患者の同意がある場合。匿名化は必要なく、元の患者データをすべてそのまま共有することができます。情報を共有することにより、将来的により良い治療成果につながる可能性がある場合、複雑な疾患を持つ患者の同意を得られる割合は高くなります。一方で、従来の一般医療データに対する同意を得られる可能性はより低くなります。調査結果では、データ利用の同意を得られた割合は約25%~35%でした。
  2. 匿名化された場合。データは、個々の患者を特定できなくなるよう変更が加えられます。このプロセスには、データセットに欠如した情報があるため、特定の利用用途においてデータの価値が低下します。それでも、特定の種類の研究には十分に有効な場合が多くあります。調査結果では、約50%~75%のデータが匿名化されていました。一般的に、このデータ処理と匿名化にも患者の同意が必要とされます。
  3. FederatedまたはSwarmアクセスを経由した場合。この方法では、第三者に転送することなくデータの使用が可能になります。データは、医療機関の施設(または医療機関のクラウド環境)の外に出ることはありません。アルゴリズムの研究や分析は施設内で行われ、施設内にあるデータから「学習」します。アルゴリズムや分析の抽出には、医療機関で入手可能な完全なデータに基づいてトレーニングが実行されます。ただし、結果から個々の患者を特定することはできません。調査の結果では、約5%~15%のデータはすでにFederated/Swarm技術を介してアクセスされていました。
  4. 合成データの場合。これは、現実世界のデータの特性を複製するよう設計された人工的に作り出された情報のことです。元のデータセットのパターン、相関性、統計的特性を学習するアルゴリズムを使って作成されます。合成データは、個人情報を保持することなく、元データの統計的な整合性を維持します。
  5. 患者が故人である場合。プライバシー規制の多くは、死亡した患者の臨床データに対してあまり厳しくありません。データセットが包括的であれば、この情報には現存する患者のデータと同じくらいの価値(利用用途により異なる)がある可能性が多くあります。

今回の調査結果から、異なるレベルでのデータ匿名化により、規制上の制約や顧客の要件に対し対応していることがわかりました。患者の同意の上で入手したデータは、複数回にわたり利用することや、さまざまな方法で分析することができるため、取得者に継続的な高い実用性をもたらします。

プライバシー保護やデータセキュリティへの認識の高まりを考慮に入れると、FederatedやSwarmへのアクセスの移行の動きが高まることが考えています。しかし、これには技術や人材への多額の投資の必要性が伴うこと、また、アジアと中東ではデータ規制の政策策定がそれぞれの国ごとに大きく異なることから、この移行は緩やかなものであることが予想されます。アジアと中東のデータ規制には、例として次のものがあります。

  • シンガポールの個人情報保護法(2012年)では、個人データの収集、使用、開示、管理に関するさまざまな要件が定められています。個人データへのアクセスは許可された個人に限定されていることを確かめるための定期的な検査が義務付けられています。
  • マレーシアでは、個人データの安全性を確保するための個人情報保護法が2010年に可決されました。現在、政府はこれまで懸念となっていたデータ侵害に関する規定(データ侵害発生における当局への通知義務がないことなど)の改正を進めています。
  • インドネシアでは、包括的なサイバーセキュリティ法が整備されている一方で、2022年10月の個人データ保護法制定まで個人データ保護に関する法律は存在しませんでした。この法の執行を監督するデータ保護局が設立されています。
  • 中国の個人情報保護法(2021年)では、国境を越えた医療データや患者データの転送に関して厳格な管理が義務付けられています。国外への転送にはセキュリティ評価または政府の承認が必要です。また、大規模なデータハンドラーにはデータのローカリゼーションが要求され、従わなかった場合には厳しい罰則が科せられます。
  • アラブ首長国連邦では2019年に、医療セクターにおける情報技術と通信(ITC)の使用を規制する健康データ法が公布されました。この法律は、医療機関、保険会社、医療IT企業など国内で電子健康データを取り扱うサービスや活動を行うすべての組織に適用されます。

サービスとしてのデータ(DaaS)の販路開拓は地域の市場ダイナミクスと医療機関のケイパビリティにより異なる

販路開拓戦略は最終的な成功を大きく左右します。プロバイダーには複数の選択肢があり、これにはエンドユーザーへの直販、データ仲介業者の利用、またはこれらを組みわせた手法などが含まれます。

実用性は、次のようにそれぞれの手法により異なります。

  1. エンドユーザーへの直販では、一般的に、患者記録あたりの価格が高い一方で、相当規模のデータと販売チームを社内に構築するのに多額の投資を必要とします。
  2. データ仲介業者の利用では、一般的に、患者記録あたりの価格が低い一方で、必要なデータセットと販売チームの規模ははるかに小さく、立ち上げ期間も短くなります。

最適な手法の選択には、必要な機能を開発するための投資に加え、対象地域での価格決定力の見通し、シェア獲得、付加価値サービスの機会などの詳細にわたる評価が必要です。アジアと中東は多種多様な地域であり、規制や市場環境の舵取りをうまく行うには、国のシステムについての深い知識と研究が必要です。いずれの手法に関わらず、プロバイダーは、社内にデータ専門知識を蓄積し(または専門知識を持つ人材を採用し)、データ技術のプラットフォームを構築し(または委託し)、事業開発とデータセットの商用化のための専門チームを立ち上げる必要があります。

行動喚起:医療機関は、適切な販路開拓の手法とコンプライアンスの維持を通じて、医療データを利益につなげることができる

医療機関への影響は明らかです。データを主体としたサービスは、収益を生むビジネスの新領域となる可能性があります。医療セクターのインパクト投資に関わる投資家は、新薬、Medtech、AIの迅速な開発や、中長期的にわたる患者の転帰の改善につなげることができます。

一方で、考慮しなければならない極めて重要な項目があります。

  • データセット自体が目的と適合していなければなりません。考え得る最善のシナリオは、プライバシーとセキュリティの規制を遵守した、完全(理想的には時系列)で非常に詳細なデータセットであることです。また、さまざまなデータの発信元や地域間とのやりとりが可能で、地理的に広い範囲を網羅する形式で標準化されていることです。
  • 適切な販路開拓戦略の選択には、導入コストと商品化の側面に関する慎重な分析が必要です。導入コストは、事業開発チームに加え、適切なデータアーキテクチャの構築、技術プラットフォームやプロバイダーの選択、日々の事業運営の管理の必要性も考慮しなければなりません。
  • コンプライアンスに注意を払い、特に匿名化と同意に関しては慎重に管理しなければなりません。例えば、医用画像のオーストラリア最大のサービスプロバイダーは同社が「人工知能(AI)のトレーニングのために患者の同意なしに医療データを使用した」疑いで捜査の対象となったことが最近報道されました。6

医療機関は知識と注意を重ねながら、既存の基盤に新しく患者データを継続的に加えていくことで価値を高めることができるデータを主体とした新しいビジネスにより、利益を生み出すことができる可能性を持っています。

EMRや診療情報管理システムを提供する医療IT企業、画像ソフトウェアベンダー、病理学の企業といった周辺企業も機会を持ち合わせています。まずは、戦略を策定し、関連するデータプラットフォームへの投資と開発について検討します。これらのことにより、顧客もデータを主体とした新たなビジネスモデルを構築し、優れたデータやベンチマークの活用により事業を強化することができます。

詳細を知りたい/さらに検討したい場合は、当社までご連絡ください。

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Endnotes
1RBCキャピタルマーケッツ
2医学研究における多様性の改善、Ashwarya Sharma、Latha Palaniappan著(2021年)
3「What Do You MENA(中東・北アフリカ)?アラブ世界と臨床研究の機会」Hadi Danawi博士(2023年)。アラブ諸国と腫瘍学臨床試験:計量書誌学的分析、Humaid O. Al-Shamsi、Ibrahim Abu-Gheida他(2023年);臨床試験における包摂性と多様性、Oyiza Momoh、Susan W. Burriss、Anya Harry、Kay Warner(2020年)
4過去10年間における中国の電子医療記録(EHR)の導入状況:米中の課題と経験の連続的な調査データ分析と比較、Jun Liang、Ying Li他(2021年)
5https://www.apple.com/health/pdf/sleep-apnea/Sleep_Apnea_Notifications_on_Apple_Watch_September_2024.pdf
6https://ia.acs.org.au/article/2024/patient-data-used-to-train-aussie-startup-s-ai.html

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イノベーションに備える:ライフサイエンス分野における人工知能の成熟度のフレームワーク


Key takeaways

L.E.K. Consulting has developed an artificial intelligence (AI) maturity framework that can be deployed across use cases to assess the fit of AI, data availability, the strength of existing capabilities, the market environment and the extent of impact demonstrated.

L.E.K. applies this framework to use cases within drug discovery — namely drug repurposing, drug target identification, small molecule drug design and antibody drug design — to assess the level of AI maturity.

While some use cases (e.g. repurposing drug candidates) are more mature and have started demonstrating impact, barriers such as data availability are still being overcome in other use cases.

Advancements in technology, such as generative AI, are expected to lower barriers and accelerate the adoption of AI in life sciences.

人工知能は、大規模なデータセットを処理し、パターンを特定し、予測するという驚くべき能力を備え、ライフサイエンス業界に変革をもたらす原動力として浮上してきた。創薬を加速化し、臨床試験を最適化し、患者ケアを向上させるため、AIがますます使われるようになってきている。これらの進展は、イノベーションの変革や命を救う治療法の設計だけでなく、ライフサイエンス企業の戦略的意思決定にも影響を与える可能性がある。

このエグゼクティブインサイトでは、創薬を対象とした様々なユースケースにおけるAIの機能や利用の成熟度を評価するためのフレームワークについて説明する。

AI成熟度の評価を目的としたフレームワーク

L.E.K.では、AIソリューションの開発・導入段階を評価する包括的なフレームワークを考案し、AIイニシアチブの準備状況や可能性について、組織が的確な洞察を得られるようにした。そのフレームワークでは5つの重要な要素を検討し(図1を参照)、AI成熟度の評価に用いた(図2を参照)。

  1. 適切な課題: AIソリューションが従来のアプローチよりも適しているか、およびその利点を判断する
  2. 適切なデータ: 現在のデータの可用性、アクセス性、品質を評価する
  3. 適切な機能: 効果的に実施するために必要となる、利用可能なツール、プラットフォーム、専門知識を調査する
  4. 適切な市場構成: 積極的に取り組んでいる企業の数と製薬企業が提携にどの程度興味を持っているかを検討する
  5. 実証済みの効果: 斬新な洞察を生み出すAIの能力を評価し、これまでに達成した具体的な成功例を特定する

図1

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The AI use case framework

図1

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The AI use case framework

図2

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Different levels of AI maturity and ranges

図2

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Different levels of AI maturity and ranges

創薬のユースケースにおけるAIの評価

AI成熟度を評価するためのフレームワークの使用例を説明するにあたり、創薬におけるAIのユースケースを4つ検討した(図3を参照)。

図3

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Four use cases for AI in drug discovery in the life sciences

図3

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Four use cases for AI in drug discovery in the life sciences

1. ドラッグ・リポジショニング

これまでのところ、創薬の観点からAIの力が最も発揮されるのはおそらく、ドラッグ・リポジショニングの場面である。つまりAIを使うことで、既存の分子に対する別の適応症を迅速に同定できるのである。現在、250社を超える企業がAIを使ってドラッグ・リポジショニングに取り組んでいる。COVID-19により、この迅速かつ柔軟なアプローチを創薬に適用するという、またとない機会が得られることになった。

バリシチニブは関節リウマチを適応症としたヤヌスキナーゼ阻害薬であるが、BenevolentAIでは、同社のナレッジグラフプラットフォームを用いてCOVID-19に対する治療薬候補としてこれを同定した。2020年、入院患者を対象としたCOVID-19治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)によりバリシチニブの緊急使用許可が認められた。その後、4つの無作為化臨床試験の結果に基づき、2022年には全面的に承認されることとなった。

AIによるドラッグ・リポジショニングで特定された化合物の多くは、現在も臨床試験で評価が行われている。データが多様化しアクセス性の向上に伴い、データの可用性と品質は今後改善すると予想されており、この分野の取り組みはさらに活発化する見込みである。

2. 創薬標的の同定

AI技術により、分子疾患モデルを迅速に構築できるとともに、従来の方法よりも効率的に新薬の開発につながるような標的やバイオマーカーを同定できるようになった。複数の非構造化データセットの統合は困難であるものの、膨大な量の生物医学データが利用可能となっている。AIを使用すれば、学術論文やオミクスデータベースに加え、画像や実臨床下の患者データなど、非構造化データセットから所見を抽出・分析することができる。ナレッジグラフを使えば、分子間にある新たな関係が確認できる。ただし、基礎となるデータセットの標準化やラベリングの質によって、これらのアプローチの能力には限界がある。

創薬標的の同定という点でAIを使用した初期のプログラムでは、発見と前臨床開発のステージを経て、新たな疾患-標的の関連性をAIが同定した20種類以上の薬が、第I相、第II相試験へと進んでいる。企業がデータセットを拡大し、その結果をAIアルゴリズムにフィードバックしていくにつれ、新たな疾患-標的の関連性を有する、あるいはまったく新しい標的を有する薬が登場する数も増えていくと予想される。

3. 低分子薬の設計

利用可能な化学構造データを使用することで、AIは複雑な化学特性をシミュレートしたり、従来の方法よりもはるかに迅速かつ正確に、薬物の構造を設計したりできる。このユースケースの場合、企業はAIを使用して既存のケミカルライブラリをスクリーニングしたり、新規の化学物質を設計したりできる。このユースケースでは、基礎となるデータセットの可用性と使いやすさが引き続き大きな課題となっている。数十億の化合物からなる化学空間全体と比べれば、トレーニングセットは比較的小規模であるからだ。

加えて、標的クラスが違えばデータ可用性にも差が出てくる。つまり、キナーゼとGタンパク質共役受容体は最もよく研究されているが、これにより汎用性の高いモデルの開発や結果として得られる創薬候補の新規性に限界が生じるのである。

低分子の場合、個々のAI駆動型ツールが既に医薬品設計プロセスに不可欠な要素となっており、より大規模な予測ソリューションの開発が反復的に行われている。現時点では、AIを用いて設計された抗体よりもAIを用いて設計された低分子の方がはるかに多い。ExscientiaやInsilico Medicineといった企業による臨床プログラムは、AIの設計に基づく低分子薬の第1波の例であり、現在第II相試験が実施されている。その結果が、このユースケースの成熟度と将来性を最初に物語ることになる可能性が高い。

4. 抗体医薬品の設計

既存の構造の最適化と新規の候補薬の設計のいずれの場合でも、AIを用いたユースケースとして抗体設計の数は増加している。現在までに、臨床使用にまで至ったAIの設計に基づく抗体医薬品は殆どない。低分子薬の設計と比較してこれらの分子はより複雑であるため、独自の課題が存在する。例えば、より大規模なモデルを実行するのに必要となる計算能力などである。抗体設計のAIモデルには、抗体配列や抗体-抗原ペアのデータセットの可用性による限界もある。さらに、トレーニングデータの大部分が従来の抗体設計アプローチで使用したものと同一のライブラリに由来しているため、特異性と親和性のバランス調整など、従来からある課題の多くがそのまま残されている。

抗体医薬品の設計を目的としたAIに注力する研究者や企業からなるエコシステムは成長している。過去1年の間にも、大手製薬企業が社内ケイパビリティの強化や、スタートアップ・大手テック企業との提携を立て続けに発表している。

最近では、Xaira Therapeuticsが10億米ドルを超える資金を調達した。その計画では、タンパク質や抗体の設計を目的とした有力な拡散モデルの設計経験がある研究者を、ゲノミクスおよびプロテオミクスグループとともに採用し、de novo抗体に焦点を当てた開発に取り組むことになっている。AIプラットフォームと製薬企業との継続的な連携に加え、標準化されたオープンソースデータの増加により、このユースケースの成熟度が高まることが予想される。

見通し:ユースケース全体におけるAIの成熟度

ライフサイエンス分野におけるAIの成熟度の見通しはそれぞれ異なり、ユースケースによってばらつきがある(図4を参照)。ドラッグ・リポジショニングや創薬標的の同定といったアプリケーションでは大幅な進歩がみられるものの、抗体医薬品の設計などでは依然として比較的初期段階にあると考えられる。

図4

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AI maturity across highlighted drug discovery use cases

図4

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AI maturity across highlighted drug discovery use cases

ライフサイエンス分野のAIについて言えば、ここ数年間で最も大きく発展したものの1つが生成AIである。新規の分子構造やその他の複雑なデータを自律的に生成できるようになることで、従来からある予測型AIシステムを超えて、イノベーションやコスト削減が加速化する可能性がある。2023年6月、特発性肺線維症を適応症としたInsilico Medicineによる低分子薬(INS018_055)は、生成AIが全面的に発見・設計した最初の薬となり、第II相臨床試験に進むこととなった。Insilico Medicineは前臨床開発を完了したが、それにかかったコストは通常コストの約10%に過ぎず、所要時間も従来の方法で必要となる時間の半分以下であった。

データ可用性とアルゴリズムの最適化という点では課題があるものの、イノベーションと提携という取り組みが、今後もさらに発展を後押ししていくことになるだろう。以上のような進歩が定着し、ライフサイエンス分野のエコシステムにAIがさらに統合されていくにつれ、AIの成熟度が大幅に変化し、幅広いユースケース全体にわたり課題解決能力や達成可能な成果という点で新たな可能性が生まれると、我々は期待している。

L.E.K. Consultingにできること

創薬の加速化、臨床試験の最適化、患者ケアの向上を目的としたAIの使用がますます増えていく中、L.E.K.が作成したAI成熟度のフレームワークを用いてAIソリューションの開発・導入段階を評価することで、AIイニシアチブの準備状況や可能性について、的確な洞察を組織が得られるようになる。さらに広く捉えるならば、ビジネスモデルの選択、BD/M&A、評価、組織設計と規模拡大、さらには重要な戦略的選択肢といった点から、L.E.K.はAI企業を支援できる。

詳細を知りたい/さらに検討したい場合は、当社までご連絡ください。

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持続可能性を通じた価値の創造: 消費者の選択の変化を理解する


L.E.K. コンサルティングによる消費者行動に関する最新調査では、持続可能性の重要性がますます高まっていることが明らかになりました。同時に、調査結果から、持続可能性に関する消費者の意識は明確になっている一方、消費者が行動を起こしたり、支出を増やしたりする意欲の度合いは様々であることがわかりました。弊社の調査結果は、企業やブランドが持続可能性の追求を通じて価値創造を推進する真の機会があることを示していますが、そのためには、ターゲットとなる顧客のセグメントや、製品カテゴリー、地域固有の嗜好性を正確に理解する必要があります。

調査について

「持続可能性に関するグローバル消費者調査2024」は、L.E.K.コンサルティングが2022年に実施した調査を基に、持続可能性のトレンドが変化する中で、消費者行動がどのように変化してきたかを詳細に調査したものです。本調査は、現在10の地域まで拡大されており、本レポートでは、持続可能性に対する消費者の考え方や行動の地理的な差異を明らかにするとともに、消費者が製品カテゴリー全体にわたって持続可能性に追加の支出をする意欲を有していることを明らかにしています。

重要なポイント

  • 消費者の意識は明確であり、2019年以降、世界的に持続可能性への関心が高まっています。日本の消費者も他の地域と同様に、持続可能性が重要であると考えています。日本の消費者の間で特に強く共感を呼んでいる3つのテーマは、持続可能な産業と製造、手頃かつクリーンなエネルギー、そして気候変動対策です。
  • 消費者は、持続可能性への懸念を行動に移し始めています。特に、リサイクルなどの簡単で便利な活動や、家庭におけるエネルギー消費の削減などの経済的な活動を行う消費者が多い傾向にあります。
  • 持続可能性は、製品カテゴリー全体の購入に関する消費者の意思決定に影響を及ぼしていますが、購入基準としては品質と価格に次ぐ優先度となっています。若い年齢の消費者の間では、持続可能性は、比較的に重要な基準の1つなっています。
  • 様々な年代の消費者が、持続可能性への懸念から、ブランドや製品を切り替えていますが、すべての製品カテゴリーで一貫して同様の行動を取っているわけではなく、特定のカテゴリーにおいてのみブランドや製品の切り替えを実施しています。
  • 持続可能性に対して追加の支出をする意欲は全般的に高まっています。しかし、最近のマクロ環境の変化に伴う可処分所得の低下により、一部の世帯家庭では、経済状況がが悪化し、持続可能な代替品に対する支払い意欲が低下しています。
  • 消費者全体での持続可能性への考慮は一様ではなく、地域や顧客セグメントによって嗜好性に顕著な違いがあります。特に日本では、「倫理的に生産されたもの」「購入後のオプション」「有害な成分や素材を避けること」が消費者にとって最も重視されるサステナビリティ属性の一部です。ブランドがターゲット顧客の持続可能性に対する考え方を理解し、それに応じて持続可能性に関するポジショニングや提案を調整することが重要です。
  • 消費者は主に、パッケージやラベルを通じて製品やブランドの持続可能性について学び知ります。そのため、企業が製品ラベルや、関連するパッケージやデザインの選択を通じて、自社の持続可能性について伝えることが特に重要になります。

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ポストCovid-19時代においてバイオ医薬品企業の利害関係者に影響を与える医薬品製造の動向


Key takeaways

Advanced therapeutic modalities (ATMs) constitute a significant portion of biopharma pipelines, representing around 20% of therapeutic assets as of 2022.

The COVID-19 outbreak prompted more investments in ATM manufacturing, leading to capacity expansions by biopharmas to address the urgent demand for vaccines and treatments.

Post-pandemic, biopharmas are reassessing their manufacturing strategies by emphasizing late-stage assets, heightened outsourcing and strategic partnerships to reduce expenses.

Maintaining internal manufacturing capabilities remains crucial for biopharma firms grappling with financial challenges.

バイオ医薬品企業の臨床・市販後パイプラインの約20%を、他とははっきりと異なる治療資産群が占めている(2022年の推計)。アデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療(GTx)、細胞治療(CTx)、核酸治療(NAT)などのATMは、遺伝性疾患、血液悪性腫瘍、さらにおそらくは最も急を要するCOVID-19に対して、大きな臨床的影響を与えてきた。

2010年代のATMへの関心の高まりとともに、技術的新規性、複雑性、および能力上の制約(施設インフラと経験豊富な人材のいずれの点からも)を考慮して、製造上の課題が経営幹部の最大の関心事となった。製造所が閉鎖され、サプライチェーンが混乱したため、COVID-19パンデミック発生時にはこれらの課題がさらに悪化することとなった。これに対処するため、バイオ医薬品企業や医薬品開発製造受託機関(CDMO)は、歴史的な低金利に乗じてATMの製造能力拡大に対する投資を積極的に行った。

現在、製造リーダーは岐路に立たされている。その理由は、生産能力が需要を上回り、パイプラインの失敗、臨床の遅れ、開発の優先順位の変更などが原因で、施設が十分に活用されない可能性があるからである。現在のマクロ経済環境下では、継続的な工程開発、臨床開発、規模の拡大、製造のための資金調達には困難が伴い費用も高いため、経営陣は、内製か外注かの経営判断や、より広範な製造戦略アプローチを再検討する必要に迫られている。

パンデミック以前:Advanced therapeutic modalitiesの出現

初期の臨床試験の成功は、新たな製造技術やノウハウの必要性に加え、今後の実生産に向けた生産能力計画の必要性を示唆するものであった。初期のバイオ医薬品企業は、当初、ATMの第一波に対応するため、社内で生産能力を構築した。新たな製造ニーズを支援できる外部の専門知識やインフラがなかったからである。初期の臨床試験の成功がパイプラインの成長を促したため、結果として急速な生産能力拡大とそれに続くインフラ投資が後押しされることになった。その結果、パイプラインの拡大と成熟化が進み、急増する需要に対応できるよう、能力や生産能力への投資を目的として、CDMOを対象とした奨励策が生まれることとなった(図1参照)。

図1

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Historic ATM pipeline growth – GTx, CTx, NAT (split by mRNA and other oligos) (2017-23)

図1

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Historic ATM pipeline growth – GTx, CTx, NAT (split by mRNA and other oligos) (2017-23)
  • GTx: AveXis/NovartisによるZolgensmaの製造やSpark/RocheによるLuxturnaの製造などにみられる通り、最初に成功したAAV遺伝子治療は、一般に自社製造であった。これらの遺伝子治療薬の成功は、遺伝子治療の研究開発分野への新興バイオテクノロジー企業の殺到を引き起こした。2017年から2020年にかけて遺伝子治療パイプライン資産の数が記録的に増加(約28%)し、2020年の資金調達額が記録的なレベル(約200億米ドル)に達したため、CDMOは積極的に生産能力を評価し、新施設の開設や既存施設の買収(例:Thermo FisherによるBrammerの買収、CatalentによるParagonの買収)を行い、需要の増加に対処した。
  • CTx:一般に市販用のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)治療薬の製造は、外部委託されていた:Oxford Biomedicaは、Kymriahの独占製造契約を締結し、Juno/Bristol Myers Squibb(BMS)はBreyanziの製造をロンザに外部委託している。また、Kite/GileadもYescartaについてCDMOへの外部委託を開始した。細胞治療のバイオ製造への投資は着実に増加傾向を続けており、CTxの生産能力は約30%増加すると予想されている(BioPlan 2021報告書より)。CTx製造に対する需要が増加するにつれて、「生産能力の深刻な不足」が起きると予想されたため、CTx製造工程を刷新する必要性が高まった。
  • NAT:希少疾患の適応に対する早期承認(例:2016年の脊髄性筋萎縮症を適応としたSpinrazaやデュシェンヌ型筋ジストロフィーを適応としたExondys 51)により、この技術は実証済みである。しかしながら、NATの第一波(主としてリボ核酸干渉療法とアンチセンスオリゴヌクレオチド療法)については、反応持続性と治癒の可能性を高めた他のATMが開発されていたことから、バイオ医薬品企業のパイプラインではあまり重視されていなかった。NATは主に希少疾患を対象としていたため患者数が少なく、臨床用・市販用の製造需要はほどほどを保っており、既に確立された化学的オリゴ合成法に依存していたため、細胞治療や遺伝子治療と比べても生産能力にかかる負担は少なかった。

この時期、あらゆるATMで経験を積んだ能力のあるCDMOの供給量を需要が上回り始めた。これが原因となって、パイプラインの急成長により臨床資産に生産能力のボトルネックが生じた。また、市販薬の場合も、規模拡大が容易ではなく、一般に、別々の、より大規模な、全体的に異なる設備に対する必要性が生じるため、生産能力のボトルネックが生じることとなった。

パンデミック時代:ATMの製造に対する投資の加速

COVID-19パンデミックにより、感染増加に対処するため、グローバルに展開するバイオ医薬品企業やCDMOは、ワクチンや治療薬の開発、生産規模の拡大、製造のために多大な努力を払う必要があった。CDMOへの依存度が高かったことから、ATMの製造業者はパンデミックがもたらした混乱に激しくさらされることとなった。CDMOは、いくつかの点でATMの製造工程を複雑化させることとなる、以下のような課題に直面した:

  • 開発中のウイルスベクターワクチン(例:J&J, AstraZeneca, Sputnik)にはウイルスベクター用の製造能力が必要となるため、CDMOは緊急性のないウイルスベクター製剤の製造を最終的に最小限に抑えることになった。
  • 新施設の建設や査察の中断、作業員の利用可能性が制限されてしまう疾患や検疫など、製造サプライチェーンのすべての部分が緊迫化した結果、人手不足となり、船舶や航空輸送ルートの減少が90%を超え、作業や製造の要件に混乱が生じた。
  • 他の製品よりCOVID-19ワクチンや治療薬を優先することが差し迫って必要とされたことにより、COVID-19ワクチンや治療薬に必要となる人材や供給資材(例:培養培地、フィルター)を巡る競争が激化した。

COVID-19パンデミックが引き起こした緊迫状態にもかかわらず、ATMに対する製造需要は持続していた。COVID-19メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンは、ATMに対する投資を促す大きなきっかけとなった。mRNAワクチン以外では、景気刺激策、高騰する評価額、ほぼゼロ金利のおかげでバイオ医薬品企業にとっては資本調達が容易となった。その資本は、以下のような、ATMパイプラインの拡大や成熟化に加え、社内の製造能力/生産能力への投資に使われることとなった:

  • Gilead Sciencesの子会社であるKite Pharmaは、2019年にカリフォルニア州オーシャンサイドにウイルスベクター製造施設を新設し、2022年10月にはFDAから市販用生産に対する承認を受けている。
  • BMSは、イリノイ州リバティビルに米国での新製造施設としてウイルスベクター製造用の施設を追加する形でCTxに対する製造能力を強化した。これにより、社内のCAR-T細胞治療の開発に加え、今後必要とされる能力としての外部の提携先との関係性の両方が増強されることとなった。
  • Rocheグループのメンバー企業であるSpark Therapeuticsは、フィラデルフィアにある50万平方フィート規模のGTxイノベーションセンターに5億7,500万ドルを投資し、GTx製造のグローバル・センター・オブ・エクセレンスとなることを目指した。

最終的には、パンデミックによって供給に混乱が生じる環境となったため、経済/資本環境が有利に働いたことと相まって、資本コストや自社製造における財務リスクといったマイナス面を上回るほど、生産能力の戦略的価値が重視されるようになった。その結果、社内インフラの構築が進み、短期間のうちに数え切れないほどの施設の整備・拡張が行われることになった(図2参照)。

図2

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Announced facility developments and expansions

図2

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Announced facility developments and expansions

現在の状況と今後の展望

現在、バイオ医薬品企業は、これまでとはまったく異なるマクロ経済環境下に置かれている。市場は歴史的な高インフレに見舞われ、過去40年の中でも最速の金利上昇を招き、2010年代からCOVID-19時代にかけての歴史的な低水準に金利が戻る可能性は低い(図3参照)。

図3(パート1)

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ATM manufacturing capacity shifts among notable biopharmas/CDMOs

図3(パート1)

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ATM manufacturing capacity shifts among notable biopharmas/CDMOs

図3(パート2)

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ATM manufacturing capacity shifts among notable biopharmas/CDMOs

図3(パート2)

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ATM manufacturing capacity shifts among notable biopharmas/CDMOs

金利の急上昇により、資金調達コストが上昇し、新興バイオテクノロジー企業が利用できる資金が減少した。こうした逆風を受け、バイオ医薬品企業が取る可能性の高い対応は以下の通りである:

  • 後期段階の資産に対する集中投資:大手であれ中小であれ、バイオ医薬品企業は研究開発パイプラインとそれに伴う支出を詳細に再検討せざるを得なくなっている。最近の多くの事例を見ても、バイオ医薬品企業は、初期段階のプログラムや科学的検証が限られている資産を犠牲にし、短期間で投資回収が見込める後期段階の臨床プログラムへの投資を優先している。パイプラインの合理化により、施設にかかる固定費/間接費が、製造する必要のある少数のバッチに分散されるため、設備当たりの売上原価(COGS)が増加する。こういった慎重な研究開発投資を行う傾向が、中長期的に続く可能性が高い。
  • 外部委託率の増加:バイオ医薬品企業は、研究開発費に加え、製造インフラ投資戦略の再評価の必要性にも迫られていた。評価額が史上最高値に達し、資金調達が基本的に自由で、資金も広く行き渡っていたCOVID-19景気の間は、社内の生産能力/製造能力の構築を目指すビジネス事例の実現は、今日の環境下で行うよりもはるかに容易であった。またそれと並行して、数多くのCDMOが資金的な追い風を利用して生産能力/製造能力を拡大し、ATMの製造経験を蓄積し続けた。このような状況では、バイオ医薬品企業が製造インフラの増設に伴う固定費や間接費の発生を回避しようと試みることから、ATMの製造の外部委託率がさらに高くなる可能性がある。
  • バイオ医薬品企業間の提携の増加:パイプラインや実生産規模への拡大に対応するため、数多くのバイオ医薬品企業が、生産能力/製造能力の増強を必要としている一方、プログラムを削減したバイオ医薬品企業は不要な余剰能力を抱えている。ATM用の製造施設は通常、特定のモダリティを対象として設計されているため、改装や別の目的で利用することが困難である。そのため、遊休生産能力がバランスシートの足かせとなるのである。その結果、ATMの余剰生産能力を有するバイオ医薬品企業が、他のバイオ医薬品企業との提携や合弁事業を検討し、固定資産の利用効率を上げて、コストのかかる資産の減価償却を回避しようとする可能性がますます高まっている。

財務上・経営上の課題がいくつかあるものの、社内の製造能力の構築・維持には戦略的価値が残されていることが多い。社内に製造能力があれば、奨励策や優先順位が競合する可能性のある外部提携先への依存度が低下する、またはゼロになる可能性がある。これにより、製造業者は、規制リスクを第三者に委ねるのではなく、施設の技術移転、工程、品質を徹底して管理できるようになる。また、バッチ製造の優先順位やタイミングも徹底して管理できるため、CDMOを活用した場合には対処が難しいバッチ不良や需要の変化が生じた場合でも柔軟に対応できる。Eli LillyやNovo NordiskがGLP-1を巡り激しく競争している中、この戦略がはっきりと見える形となって現れてきた。Novo Nordiskが先頃、Catalentから複数の施設を買収し、供給上の制約を緩和できるようにしたことで、市場での勝利という点から有利な立場に立つ可能性が出てきたのである。

医薬品製造投資戦略に関する考慮事項

医薬品製造における内製か外注かの経営判断をするには、細かく分かれた多くの側面から検討する必要があるが、以下にあげた重要な問いかけを使えば、経営面、財務面、戦略面から見た得失評価ができる:

  1. 需要予測の精度はどの程度か? 予測は常に推定ではあるものの、予測の中には、他の予測よりも「確定的な」仮定に基づいているものがある。例えば、既知の患者数が少なく、競合薬の数が限られている疾患を適応としたATMは、患者数が多く、現在も今後も競合企業が数多い疾患を適応とした場合よりも需要の推測が簡単かもしれない。承認される見込みが多岐にわたるために需要シナリオの幅も広い資産のポートフォリオを考慮する場合には、これがさらに複雑化することになる。
  2. 上市までにかかる時間は? 既存の施設を活用するにしても、GMPに準拠した原材料を作るための製造インフラの調達、設計、構築、設置、検証に3~5年かかることがある。投資の決定は、臨床/市販材料のクリティカルパスにならない程度の早い時期に行う必要があると同時に、医薬品を製造するための工程を適切に設計し、大規模な投資の妥当性が確保できるほどそのプログラムに対するリスクが十分に軽減できるだけの時間をおいた時期に決定しなければならない。
  3. COGSに競争力はあるか? 数量が少ない、および/または製剤の種類のばらつきが大きいポートフォリオの場合、社内製造に対する投資では効率が低くなる可能性がある。競争が激しい疾患を適応とした資産や価格設定に対する強い逆風が吹いている市場である場合において収益性を維持するには、COGSを同業他社と同程度かそれ以下に抑えることが重要である。社内製造に対する投資にある財務リスクを把握できるよう、需要が低い場合に考えられるシナリオを考慮し、安定したCOGSモデルを作成することが不可欠である。
  4. 工程技術に競争上の優位性があるか? ATMの多くで、最先端の治療薬を製造するために新たな工程技術が設計・活用されている。製造工程の背景にある知的財産により競争上の優位性が生じているのであれば、工程をさらに広範囲に利用できる可能性のあるCDMOと連携するより、戦略的な社内投資を行う方が、差別化要因を維持できると考えられる。

今回の分析は、ATMの製造に特化したものであるが、その枠組みは他のモダリティ(モノクローナル抗体、小分子など)にも広く適用できる。金利がゼロではない時代が続く中、これらの問いかけに対する答えを出すことで、社内製造に対する投資の決定を行う際につきものの財務上・戦略上の考慮事項に関する情報を手にすることができるだろう。

詳細を知りたい/さらに検討したい場合は、当社までご連絡ください。

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新世代の薬物療法には新たなビジネス戦略が必要


ライフサイエンス業界は、医薬品の発見、開発、製造の方法において抜本的な進化を遂げており、従来の医薬品の研究開発方法から、細胞を再プログラムして病気と闘わせる細胞療法、機能不全の遺伝子を編集または置換する遺伝子療法、タンパク質の生成を促進または停止する核酸療法(モデルナ社およびファイザー/ビオンテック社のmRNA COVID-19ワクチンが代表例)などの先進的治療法(Advanced Therapeutic Modalities /ATM)へと移行しています。

先進的治療法(ATM)の治療効果は、まるでSFのように感じられるかもしれません。しかし、L.E.K. コンサルティングのライフサイエンスパートナーであるアレックス・ヴァダスジェフ・ホルダーアダム・シーバートがハーバード・ビジネス・レビューの記事で述べているように、それらのビジネスへの影響力は決して軽視できません。先進的治療法の研究から実用化までのプロセスは従来の方法と大きく異なるため、業界全体が一連の深刻な変革に直面しています。従来の医薬品は「発見」を通じて生み出されることが多く、数年にわたる合成、最適化、および試験というプロセスを必要としています。

一方、先進的治療法は「発見」されるのではなく、「設計」によって生み出され、個々の患者に合わせてカスタマイズすることが可能です。それらは単純な化学化合物ではなく、多くの場合、大きく複雑な生体分子や、複数のステップ・供給源からなる製造プロセスを必要とする細胞であることが多いです。これらの革新的な医薬品は、高度な複雑性と個別化という特徴を持っているため、大規模な生産が難しく、「スケールアウト」の方式を取る必要があります。つまり、従来とは異なるサプライチェーンロジスティクスと製造コストの管理が必要となる複数の小規模ロットで製造されます。

このことから、業界関係者は開発コストとリスクの移行に備える必要があります。すなわち、発見段階から下流の製造段階へシフトするということです。今後、医薬品開発のタイムラインは加速し、コストは上昇することが予想されます。バイオ医薬品企業は、先進的治療法を使用した製品の製造およびサプライチェーンに、より一層注力する必要があります。

詳細については、hbr.org の記事をご覧ください。 

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